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特集

花にいろいろな 色や形がある理由

花にいろいろな
色や形がある理由

『プチペディア』で迫る、
昆虫・植物・動物のヒミツ

編集・構成/田中 いつき

© Tetsuya Tanooka/a.collectionRF /amanaimages

街路樹や公園の木々のいろいろな花が咲くシーズンが始まりました。しかし、一言に「花」といっても、その形や色は様々です。なぜ、花はいろいろな色や形をしているのでしょうか? 花びらのない花もあるって本当? NATURE & SCIENCE が手がける『PETiT PEDiA にほんの植物』(アマナイメージズ)の掲載記事から再構成してお届けします。

ハナミズキ。花びらに見えるのは、葉の一種。総苞片(そうほうへん)と呼ばれます ©Tetsuya Tanooka/a.collectionRF /amanaimages

ハナミズキ。花びらに見えるのは、葉の一種。総苞片(そうほうへん)と呼ばれます
©Tetsuya Tanooka/a.collectionRF /amanaimages

色とりどりの花は、私たちを楽しませ、癒してくれます。しかし、花が多様なのは、人間のためではありません。

花は植物の生殖器官です。花はおしべやめしべをもち、おしべの花粉がめしべにつくことで、たねをつくり、次の世代へ命をつなぎます。

しかし、植物は自分では動けないので、花粉を運んでもらうには、誰かの手を借りなければなりません。


一番多い花の色は?

花粉を運んでもらう手段は植物によって様々ですが、なかでも虫に花粉を託す植物は、花びらに特徴を持っています。目立つ花びらで、虫に花の存在を知らせているのです。

オニユリに止まるアゲハ。アゲハの仲間は赤い花を好みます ©HISAO NAKAMURA/a.collectionRF /amanaimages

オニユリに止まるアゲハ。アゲハの仲間は赤い花を好みます
©HISAO NAKAMURA/a.collectionRF /amanaimages

日本の野生植物のなかで、一番多い花の色は白、次いで黄色、紫、赤の順とされます。アゲハの仲間は赤い色を知覚でき、赤い花を多く訪れます。

また昆虫の多くは紫外線を見ることができるので、花の色や模様も人間とは違って見えるようです。


色や形以外に虫を呼ぶ方法

花の色や形以外に、匂いも虫を呼ぶための手段です。強い香りを出し、虫を呼び寄せるのです。

ハゴロモジャスミン。甘やかで強い香りを放つ花 ©Tetsuya Tanooka/a.collectionRF /amanaimages

ハゴロモジャスミン。甘やかで強い香りを放つ花
©Tetsuya Tanooka/a.collectionRF /amanaimages

香りの成分は植物によって様々。すべての花に香りがあるわけではありませんが、香りは花が見えない場所にも届くので、暗いところや他の植物の陰に隠れてしまうような環境では効果的です。

そうは言っても、虫の好みに合わせた香りになるため、人間にとって心地よいものばかりではありません。クロユリやラフレシアなどは、人にとっては悪臭を放つことで有名です。

ラフレシア科の花。ラフレシアの仲間には花の直径が1mを超えるものも! ©Robertharding/Masterfile /amanaimages

ラフレシア科の花。ラフレシアの仲間には花の直径が1mを超えるものも!
©Robertharding/Masterfile /amanaimages


虫はなぜ花を訪れる?

虫たちは善意で花粉を運んでいるのではありません。美しい花びらや良い香りに誘われて虫がやってくるのは、そこに食べ物があるからです。

花の中の蜜や花粉を食べに訪れた虫の体に花粉がつきます。1つの花の蜜を食べた後、次々と違う花へうつるため、先の花の花粉が、次の花へと運ばれ、めしべで受粉するのです。

生育環境や季節、開花時間などにより、花に来る虫の種類も変わるため、花の形も虫が蜜や花粉などを得やすい形に進化してきました。

ネズミモチ。街路樹に多く使われている、なじみ深い花 ©yamada takahiko/nature pro. /amanaimages

ネズミモチ。街路樹に多く使われている、なじみ深い花
©yamada takahiko/nature pro. /amanaimages

例えば、セリやネズミモチは小さな花が集まって咲きます。蜜が浅いところにあるので、口吻(こうふん)の短いハエやハナアブでも楽に蜜を獲得できます。

これに対し、ヤマツツジは細い管のようになった花びらの奥に蜜があります。そのためチョウが細長い口吻をストローのように差し込んで、蜜を吸います。

ヤマツツジ。花の色と形の両方で、チョウの仲間を誘います ©arc image gallery /amanaimages

ヤマツツジ。花の色と形の両方で、チョウの仲間を誘います
©arc image gallery /amanaimages

このように特定の虫だけが訪れるしくみを持つ花は、虫が同じ種類の花の間を飛び回ることで、効率よく花粉を運んでもらえるのです。こうした花のことを「虫媒花(ちゅうばいか)」と呼びます。


花びらがない花もある?

イチョウの雌花。雌雄異株(しゆういしゅ)のため、雌株に雌花、雄株に雄花がつきます ©hany ciabou/Nature Production /amanaimages

イチョウの雌花。雌雄異株(しゆういしゅ)のため、雌株に雌花、雄株に雄花がつきます
©hany ciabou/Nature Production /amanaimages

実は、花びらがない花もたくさんあります。

「花」とは植物の生殖器官であるめしべとおしべ、その付属品からなる構成物のことなのです。風が花粉を運ぶタイプの花は虫や鳥を呼ぶ必要がないので、目立つ花びらがありません。こうした花は「風媒花(ふうばいか)」と呼ばれます。

街路樹に使われることの多いイチョウも風媒花の一つ。5~6月ごろに花をつけていますが、地味で目立ちません。その他、マツやスギ、ブナやニレなども風媒花で虫媒花に比べ、目立たない花を咲かせます。

ユリノキ。ウメやサクラと同様、鳥が花粉を運ぶ「鳥媒花(ちょうばいか)」。花の構造がしっかりとしていて、蜜の分泌が多いという特徴が。熱帯に多く、香りはあまりありません ©KEIICHI TAKITA/a.collectionRF /amanaimages

ユリノキ。ウメやサクラと同様、鳥が花粉を運ぶ「鳥媒花(ちょうばいか)」。花の構造がしっかりとしていて、蜜の分泌が多いという特徴が。熱帯に多く、香りはあまりありません
©KEIICHI TAKITA/a.collectionRF /amanaimages

身近な街路樹も多く花をつけるシーズンになりました。遠出ができないのは残念ですが、ぜひ近所の街路樹に花がついているか、どんな色や形の花か、どんな香りがするか、どんな場所についているか、どんな虫が来ているか、観察してみてくださいね。


この記事の元になった本は……
プチペディアブック「にほんの植物」(アマナイメージズ)
植物のステージであるたねや実、発芽、生長、開花、枯れの5つの章に分けて、さまざまな疑問と解答を紹介しています。取り上げた疑問はトリビア的なものではなく、植物の全体像を知るための近道となるものです。ぜひ、お子さんと一緒にコミュニケーションしながら読んでみてください。好奇心を育み、植物に興味を持つきっかけとなるはずです。 
http://petitpedia.jp

[企画・編集]ネイチャー&サイエンス
[監修]小林正明(元飯田女子短期大学教授)[文]大地佳子
[判型]B6変 
[ページ数]152ページ
本体価格 ¥1,400(+税)

Profile
Editor
田中 いつき Itsuki Tanaka

フリーランスライター。東京農業大学卒業後、自然体験活動に従事。2014年よりフリーランスライターに。ライフスタイル、エンタメ、レシピ作成記事などを執筆。ペーパー自然観察指導員(日本自然保護協会)。「家の周りをのんびりとお散歩する機会が増えたのではないでしょうか?いつもは素通りする街路樹や植え込みの様子を観察すると、発見がたくさん。お子さんとも『花を5種類探す』や、『花に来ている虫を3種類探す』などすると、かくれんぼ絵本のように楽しむことができますよ」

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