切り花が長持ちする
コツは?
『プチペディア』で迫る、
昆虫・植物・動物のヒミツ
©︎ Cavan Images /amanaimages
『プチペディア』で迫る、
昆虫・植物・動物のヒミツ
花屋に並ぶ色とりどりの切り花。美しさに心を惹かれても、持ち帰ったらすぐに枯れてしまうのではと敬遠する方もいらっしゃるかもしれません。また、頂きもののブーケに戸惑う方もいらっしゃるかもしれませんね。では、どうしたら切り花を美しいまま、長く楽しむことができるのでしょうか? NATURE & SCIENCE が手がける『PETiT PEDiA にほんの植物』(アマナイメージズ)の掲載記事から再構成してお届けします。
空間を華やかに彩ってくれる、切り花。花びんにさしておいた花はすぐに死んでしまうわけではありません。
植物は根を切られても、茎の維管束(いかんそく)からストローと同じ原理で水を吸い上げています。しかし、時間が経つとやがてしおれ、枯れてしまいます。それは根を失ったため、生長や開花に必要な養分を吸収できなくなってしまうからです。
切り花をできるだけ長く楽しむためには、水と養分を供給し、バクテリア発生を防止する必要があります。花を買ったら、簡単に下処理をするのが、長く花を楽しむコツです。
花びんの水に浸ってしまう下部の葉や花は、腐りやすくバクテリア発生の元になるので、切り落とします。花びんに入れた時にぶつかったり、全体のバランスを崩していたりする葉や花も、エネルギーを無駄に使うので、切り落としてしまいましょう。
切り花は「水切り」をすると、水を吸い上げやすくなります。
水切りをするには、まずバケツなどに深く張った水の中に花を入れます。そこへはさみを入れ、茎の下部を一気に斜めに切り落とします。断面を斜めにすることで、断面積が広くなり、維管束が多く露出することになります。そのため、水を吸う量が増えるのです。ラナンキュラス、トルコギキョウ、チューリップなどの一般的な花はこれで十分です。
花の種類によっては、切り口を煮る「湯上げ」や、火で炙(あぶ)る「焼き上げ」をすることもあります。
煮たり焼いたりすることで、なぜ水を吸うようになるのでしょう。実は、まだ詳しくは解明されていないようです。 しかし、経験則として広く知られており、熱により殺菌できることや、維管束の中の空気が温められ膨張し、切り口から押し出されることにより、水を吸い上げやすくなるのではないかとも言われています。
水切りをしたあとは花びんに生けます。花びんがない場合には、空き瓶やグラスに入れるのも素敵ですね。
水の殺菌には、花屋さんでもらえる品質保持剤が効果的です。これには殺菌剤や、植物の養分となる糖分が含まれています。品質保持剤がないときは台所用の塩素系漂白剤を1滴、花びんに垂らしておくのもよいでしょう。
花びんを置く場所にも気を配りましょう。直射日光のあたる場所はNG。気温の低い場所であればバクテリアの発生を抑制できますし、花へのダメージも避けられます。エアコンやファンの風があたる場所も避けてください。
そして、水を毎日取り替え、清潔に保ちます。花びんや茎に「ぬめり」がついてきてしまったら、よく洗ってください。ぬめりの正体はバクテリア。なるべく減らしましょう。元気がなくなってきたら、再び水切りをするのも良いでしょう。
切り花はちょっとしたお手入れで、長く楽しむことができます。パッと空間を明るくする花のパワーで、お部屋を演出してみませんか?
この記事の元になった本は……
プチペディアブック「にほんの植物」(アマナイメージズ)
植物のステージであるたねや実、発芽、生長、開花、枯れの5つの章に分けて、さまざまな疑問と解答を紹介しています。取り上げた疑問はトリビア的なものではなく、植物の全体像を知るための近道となるものです。ぜひ、お子さんと一緒にコミュニケーションしながら読んでみてください。好奇心を育み、植物に興味を持つきっかけとなるはずです。
http://petitpedia.jp
[企画・編集]ネイチャー&サイエンス
[監修]小林正明(元飯田女子短期大学教授)[文]大地佳子
[判型]B6変
[ページ数]152ページ
本体価格 ¥1,400(+税)
フリーランスライター。ライフスタイル記事やインタビュー記事を書いています。生き物や農林業の話題が好きです。ペーパー自然観察指導員(日本自然保護協会)。「実は花粉症もあって、花より団子派です……が、花がある空間が明るくなるのは不思議ですごいと思っています。昆虫や鳥が花に引き寄せられるように、人間も生き物として花に反応するようになっているのでしょうか」