秋になると、なんで
木々は紅葉する?
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秋も深まり、街路樹や公園の木々が色づいてきました。なぜ、秋になると葉が色づくのでしょうか? 赤や黄色などさまざまな色になるのは、なぜなのでしょうか? お散歩や通勤時に木々を眺めるのが、ちょっと楽しくなる情報をお届けします。
赤や黄色に色づく木々は、日本をはじめとする湿潤な温帯の秋を象徴する風景です。
秋に葉が美しく紅葉するのはイロハモミジやイチョウなどの落葉樹*1 です。木ならすべてが紅葉し、葉を落とすかというと、そうではありません。常緑樹*2 の葉は1年中、緑色の葉を枝に付けたままです。
木にとって葉は、光合成をおこなうための大切な器官です。なくなれば枯れてしまいます。落葉樹はなぜ、葉の色を変え、落とすのでしょうか?
*1 落葉樹(らくようじゅ)
イロハカエデやイチョウ、ケヤキなど、主に秋に葉を落とす樹種。短期間に一気に葉を落とすので、まったく葉がない期間がある。
*2 常緑樹(じょうりょくじゅ)
シイの仲間や、スギヒノキなど、一度に葉を落とすことがないので、1年中葉をつけているように見える樹種。
落葉樹が生えている湿潤な温帯の気候は1年を通して一定ではありません。秋になれば、日光があたる時間が減少し、気温が低くなっていきます。そうすると、葉に含まれる葉緑体の働きが鈍くなり、光合成の効率が下がっていくのです。
葉は生産*3の場ですが、葉自体を維持するのにも栄養が必要です。そこで、生産する養分が少なくなった葉を落とすことにしたのです。
*3 生産
植物は葉にある葉緑体で光合成をおこない、体を維持する有機物を生産する。
さらには、冬の空気は乾燥しているため、葉の表面から水分が蒸発しやすくなります。雨の少ない冬に水分が奪われるのは致命的な事態になります。また、水分を多く含む落葉樹の葉は凍りやすいというのも冬を越すのに不利です。
そうした数々の理由から、秋に葉を落とし、夏の間にため込んだ養分を少しずつ使いながら、冬をじっと耐える種の植物が繁栄していったと考えられています。
それでは、どのようなしくみで色づいていくのでしょうか。切り花が枯れていくのとは違うようです。
落葉樹は秋になると、葉を落とす準備を始めます。葉を緑に見せている成分である葉緑素は、通常は分解と生産を繰り返していますが、秋になると分解だけが行われるようになります。
すると、葉と枝の間に「離層(りそう)」という組織ができます。これにより、葉と枝の間で行われていた水分や栄養分のやりとりがされなくなります。そのため、光合成で作られた糖分は葉にたまるようになり、アントシアニン*4 という赤色の色素に変化します。
緑色の色素が減り、さらに赤色の色素ができるため、葉は赤く見えるようになります。これが文字通りの「紅葉」、葉が赤く変化する木で起きている仕組みです。
*4 アントシアニン
植物中に存在する赤~紫色の色素。ナスやリンゴなどの色もアントシアニンによるもの。
イチョウのように、秋に黄色くなる葉の場合はどうでしょう?
この場合、葉緑素が分解されるところまでは同じですが、アントシアニンは形成されず、葉に元々あったカロテノイド*5 という色素が目立つようになり、黄色く見えるようになります。黄色い紅葉のことを、特に「黄葉(こうよう)」と書き分ける場合もあるようです。
*5 カロテノイド
動植物に存在する黄色系の色素。ニンジンやカボチャなどの他、エビやイクラなどにも含まれる。
一般に紅葉は気温が低いと早く進み、気温が高ければ遅くなります。関東地方では、紅葉の進み方と9月の平均気温に関係があることがわかっています。また、昼夜の気温差がある方が、はっきり色づくとも言われています。
一方、紅葉しないと思われる常緑樹ですが、落葉樹と同様に古い葉を落とす際に赤や茶色に変色しています。春先の新しい葉が出るころに、古い葉を落とすタイプと、夏にかけて少しずつ入れ替えていくタイプがあります。いずれも、緑の葉が旺盛(おうせい)に生えている中で、古い葉を落としていくので目立ちにくいのです。春が近づいたころ、観察してみてくださいね。
樹種によって色合いはもちろん、色づき始める場所や、時期も異なります。遠くに紅葉狩りへ行くのもいいですが、近所の木々がどのように色づいていくかに注目してみると、より紅葉シーズンを楽しむことができますよ。
フリーランスライター。東京農業大学卒業後、自然体験活動に従事。2014年よりフリーランスライターに。ライフスタイル、エンタメ、レシピ作成記事などを執筆。ペーパー自然観察指導員(日本自然保護協会)。「紅葉の後に落ちた葉は、土壌生物の餌となり、その土壌生物たちのフンは、植物の栄養になります。自然の循環システムは、無駄なくよくできていると感心するばかりです」