カマキリの卵は
どうして泡なのか
『プチペディア』で迫る、
昆虫・植物・動物のヒミツ
©︎ICHIRO KATAKAI/amanaimages
『プチペディア』で迫る、
昆虫・植物・動物のヒミツ
ひとつの大きなかたまりに見えるカマキリの卵からは、春になるとたくさんの幼虫が生まれてきます。今回はその不思議に迫ってみましょう。NATURE & SCIENCEが手がける『PETiT PEDiA せかいの昆虫』(アマナイメージズ)からの掲載記事から再構成してお届けします。
公園や原っぱなど身近な場所で、カマキリの卵を見たことがある人は多いのではないでしょうか。
冬のあいだ、木の枝などにくっついている薄茶色のかたまりがそれです。これは、正確には卵鞘(らんしょう)と呼ばれるもので、オオカマキリの場合、中には小さい卵が200個ほども詰まっています。
秋になると、カマキリのメスは白っぽい泡のようなものに包まれた卵を産みます。この泡は固まると弾力性のあるスポンジのようになり、外敵から卵を守るのです。
この卵全体を卵鞘といい、カマキリのメスはこの卵鞘を2〜5個ほど産みます。
卵鞘は中に空気を含んでいて断熱効果があり、外気の影響を受けにくいため、冬の寒さからも卵を守ることができます。
「カマキリはその年の積雪量を予測し、雪に埋もれない高さに卵を産む」と昔から言われていました。
しかし、実際は雪の下からも卵鞘はたくさん見つかる上に、雪に覆われた卵鞘からも問題なく孵化(ふか)するようです。
バッタの仲間も土の中に卵鞘に包まれた卵を産みますが、こうした卵鞘を産むものは、昆虫のなかでも少数派です。
ふわふわの卵は、中にいる子どもたちが寒い冬を無事に越すための、愛情のかたちでもあったのですね。
この記事の元になった本は……
プチペディアブック「にほんの昆虫」(アマナイメージズ)
昆虫の成長ステージである卵、幼虫、さなぎ、成虫の4つの章に分けて、さまざまな疑問に回答しています。取り上げた疑問は単なる雑学的なものではなく、昆虫の全体像を知るための近道となるものです。ぜひ、お子さんと一緒にコミュニケーションしながら読んでみてください。好奇心を育み、昆虫に興味を持つきっかけとなるはずです。
[企画・編集]ネイチャー&サイエンス
[監修]岡島秀治(東京農業大学教授)[文]丸山貴史(アードバーグ)
[判型]B6変
[ページ数]152ページ
本体価格 ¥1,400(+税)
編集者。1989年生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。山と溪谷社で書籍編集担当、KADOKAWAでカメラマンとして勤務した後、フリーランスに。食や生きものに興味があります。実家は鰻屋さん。「『カマキリの卵は雪に埋もれない高さにある』というのは俗説なんですね……」