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アマナとひらく「自然・科学」のトビラ
カブトムシとクワガタ、 どっちが強い?

カブトムシとクワガタ、
どっちが強い?

『プチペディア』で迫る、
昆虫・植物・動物のヒミツ

編集・構成/草柳 佳昭

©︎ imamori mitsuhiko/nature pro. /amanaimages

残暑の厳しい季節、まだまだカブトムシやクワガタも元気に活動しています。カブトムシとクワガタが戦うと、勝つのはどっちか? 昆虫に興味のある人なら一度は浮かんだことのあるこの疑問。実際のところはどちらが強いのでしょうか? NATURE & SCIENCEが手がける『PETiT PEDiA にほんの昆虫』(アマナイメージズ)の掲載記事から再構成してお届けします。

すくい投げのカブトムシ vs つかみ投げのクワガタ

クヌギやコナラのような樹液の出る木には、チョウやハチなど多くの昆虫が集まります。

たいていは体の小さい方が樹液を吸う場所を譲るため、けんかになることは少ないのですが、同じくらいの力量の昆虫が出会えば、争いに発展することもあります。

樹液場で争うクワガタとカブトムシ。カブトムシ(Trypoxylus dichotomus )はおなじみの大きく長いツノが武器 ©︎ hoshi teruyuki/nature pro. /amanaimages

樹液場で争うクワガタとカブトムシ。カブトムシ(Trypoxylus dichotomus はおなじみの大きく長いツノが武器
©︎ hoshi teruyuki/nature pro. /amanaimages

日本の雑木林で最強候補なのは、スズメバチの針を通さないほど硬い体を持つ、カブトムシやクワガタなど大型の甲虫です。


カブトムシは頭の角の先端を相手の体の下に差し込んでからの「すくい投げ」を得意とし、クワガタは相手の胴体を挟んでからの「つかみ投げ」を得意とします。

クワガタの武器である「つかみ投げ」。写真のクワガタはノコギリクワガタ(Prosopocoilus inclinatus )で、オスの大きなあごが特徴。相手の体を強い力で挟んで持ち上げる ©︎ imamori mitsuhiko/nature pro. /amanaimages

クワガタの武器である「つかみ投げ」。写真のクワガタはノコギリクワガタ(Prosopocoilus inclinatus )で、オスの大きなあごが特徴。相手の体を強い力で挟んで持ち上げる
©︎ imamori mitsuhiko/nature pro. /amanaimages


平均の大きさで有利なカブトムシ

それでは、カブトムシとクワガタではどちらが強いのかといえば、たいていの場合、体の大きい方が勝ちます。

オスの大きさを比べると、カブトムシが全長50〜70 mm(角を含む)、オオクワガタが体長27〜76 mm、ヒラタクワガタが体長29〜73 mm、ミヤマクワガタが体長40〜79 mm、ノコギリクワガタが体長25〜75 mmです。

最長サイズまで比べると、カブトムシがやや劣勢のように思えますが、じつは平均サイズではカブトムシの方が大きく、体重も重いため、有利なケースが多いようです。

カブトムシに持ち上げられるノコギリクワガタ。体格差があるとやはり不利だ ©︎ kubo hidekazu/Nature Production /amanaimages

カブトムシに持ち上げられるノコギリクワガタ。体格差があるとやはり不利だ
©︎ kubo hidekazu/Nature Production /amanaimages


同じサイズのカブトムシとクワガタが出会ったら?

それでは、体の大きさが近いカブトムシとクワガタが出会った場合は、勝負の行方はどうなるのでしょうか? これは、クワガタにも勝機があります。

例えばカブトムシ同士であれば、どちらがタイミングよく「すくい投げ」を繰り出せるかどうかで勝負がつきますが、対クワガタとなると話が変わってきます。

オスのノコギリクワガタのあご。内側についたギザギザの突起で相手をつかみ、投げ落とす ©︎ shinkai takashi/Nature Production /amanaimages

オスのノコギリクワガタのあご。内側についたギザギザの突起で相手をつかみ、投げ落とす
©︎ shinkai takashi/Nature Production /amanaimages

特に、ノコギリクワガタやヒラタクワガタのような強力なあごを持つ種の場合、カブトムシにすくい投げをされても、そのあごでカブトムシの頭やむねを挟むことで放り投げられないように「こらえる」ことができるのです。

カブトムシのすくい投げに抵抗するノコギリクワガタ ©︎ imamori mitsuhiko/nature pro. /amanaimages

カブトムシのすくい投げに抵抗するノコギリクワガタ
©︎ imamori mitsuhiko/nature pro. /amanaimages


クワガタに十分なあごの大きさがある場合、カブトムシのすくい投げをこらえた後、相撲の土俵際で繰り出される「うっちゃり」のようにカブトムシの体を投げ落として戦いに勝つこともあります。

夏の夜の樹液酒場では、わたしたちには見えないところで連日このような戦いが繰り広げられているのかもしれません。

©︎ MANABU/Nature Production /amanaimages

©︎ MANABU/Nature Production /amanaimages


この記事の元になった本は……
プチペディアブック「にほんの昆虫」(アマナイメージズ)
昆虫の成長ステージである卵、幼虫、さなぎ、成虫の4つの章に分けて、さまざまな疑問に回答しています。取り上げた疑問は単なる雑学的なものではなく、昆虫の全体像を知るための近道となるものです。ぜひ、お子さんと一緒にコミュニケーションしながら読んでみてください。好奇心を育み、昆虫に興味を持つきっかけとなるはずです。
 

[企画・編集]ネイチャー&サイエンス
[監修]岡島秀治(東京農業大学教授)[文]丸山貴史(アードバーグ)
[判型]B6変 
[ページ数]152ページ

本体価格 ¥1,400(+税)

Profile
Editor
草柳 佳昭 Yoshiaki Kusayanagi

編集者。1989年生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。出版社で書籍編集担当、カメラマンとして勤務した後、フリーランスに。図鑑や実用書、Web媒体などの編集を行う。実家は横浜の鰻屋さん。「カブトムシ優勢かと思いきや、大きさによってはクワガタも善戦するようで驚きでした。個人的にはクワガタを応援してしまいます」

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