ササとタケ、
どこが違う?
『プチペディア』で迫る、
昆虫・植物・動物のヒミツ
©︎ HIDEAKI TANAKA/SEBUN PHOTO /amanaimages
『プチペディア』で迫る、
昆虫・植物・動物のヒミツ
七夕の飾りと言えばササ飾り。ですが、街中にはタケで作った飾りがあることも。とても似ていますが、そもそもササとタケ、いったい何が違うのでしょうか? NATURE & SCIENCE が手がける『PETiT PEDiA にほんの植物』(アマナイメージズ)の掲載記事から再構成してお届けします。
ササとタケ。よくしなる本体である「稈(かん)*1」に細長い葉がついた様子はとても似ていますね。
*1 稈(かん)
イネ科植物の茎にあたる部分のこと。中空で節のある茎を特にこう呼ぶ。
一般的には背が高く、稈が太目のものをタケ、低く細いものをササと呼ぶことが多くなっています。
植物分類学ではササとタケは、成長時に稈から皮が落ちるか否かで区分されていました。タケの芽=タケノコですから、タケノコの皮が剥(は)がれ落ちるのがタケということです。
それに対して、ササではその皮が半年以上くっ付いたままなのです。
そのため、稈が細く、ササに見える種類で「○○ササ」と名前がついていても、タケに分類されている種類もあります。
ところが、近年、植物分類にも遺伝子解析が行われるようになると、従来、タケとされていたものでもササに近く、反対にササとされていたものがタケである例もあることがわかってきました。
木と草の違いについては、いろいろな考え方がありますが、一般に木は硬く、太くて背が高く、何年も生き続けるのが特徴です。なかには何千年という長い期間を生きているものもあります。これに対し、草は木に比べて柔らかく、細くて背も低く、木のように長生きしません。
これらの違いは、木が「木化 *2」することと、「形成層 *3」を持つことによります。柔らかい草の茎に、この2つはありません。
*2 木化(もっか)
植物特有の組織である細胞壁がリグニンという物質を含み、硬く丈夫になること。
*3 形成層(けいせいそう)
木の幹にある分裂組織のこと。この組織が盛んに細胞分裂を行うことで、木は太くなっていく。
タケが硬く丈夫になるのは 、木化を行っているからです。しかし、形成層がないため、最初の年の太さ以上に肥大成長はしません し、上に伸びる成長も止まります。このことから、タケは木と草の中間的な性質を持つと考えることができます。
一方で、タケとササは同じイネ科です。イネ科の他の植物は草であることから、タケを草と考える考え方もあります。
まだ現時点ではいろいろと定まっていないことこそ、タケとササの特徴であるとも言えます。
和風のしつらえに必ず登場するタケ製品。しなやかで、加工しやすい素材として、かつては日常使いされ、どの家庭にもあるものでした。
しかし、加工のしやすいプラスチック製品が現れ、状況は一変。作るのに時間がかかり大量生産しにくかったり、しっかり乾燥させないとカビが生えたりするタケ製品は、日常的には利用されなくなったのです。
そのため、タケ材の消費量が減り、困ったことが起きました。さまざまな日用品の材料として利用しているうちは管理されていた竹林が、管理されなくなると生え放題になってしまったのです。
タケは繁殖力が強く、成長スピードも早いため、タネを作らずとも地下茎で生息エリアを広げることができます。そのため、隣の林地や畑、住宅の敷地などをどんどん飲み込んでいきます。
一方で、60年や120年に1度などのとても長期的な間隔で花を咲かせるタケは、いったん花が咲くと、同じ地下茎のタケがすべて枯れてしまうのです。
そうすると、枯れたタケが広い面積で放置されることとなるため、土砂崩壊などの危険性が高まるとも言われています。
そんな状況を何とかしようと、各地でタケを利用した催しが行われています。
タケの中に明かりを灯した竹燈籠は、柔らかで暖かな明かりを放つため、全国の祭りやイベントでも人気です(2020年の開催については、開催地の情報を確認してください)。
また、タケを材料にした布製品やバイオ マスプラスチック*4 など、新たなタケ製品を作る取り組みが全国で行われています。
*4 バイオマスプラスチック
トウモロコシやサトウキビから稲わら、微細藻類など、再生可能なバイオマス資源を原料として、化学的または生物学的に合成することで作られるプラスチック。石油原料より環境負荷が低いとされている。
このように、成長の早いタケの新たな利用のかたちが模索されているのですね。
この記事の元になった本は……
プチペディアブック「にほんの植物」(アマナイメージズ)
植物のステージであるたねや実、発芽、生長、開花、枯れの5つの章に分けて、さまざまな疑問と解答を紹介しています。取り上げた疑問はトリビア的なものではなく、植物の全体像を知るための近道となるものです。ぜひ、お子さんと一緒にコミュニケーションしながら読んでみてください。好奇心を育み、植物に興味を持つきっかけとなるはずです。
http://petitpedia.jp
[企画・編集]ネイチャー&サイエンス
[監修]小林正明(元飯田女子短期大学教授)[文]大地佳子
[判型]B6変
[ページ数]152ページ
本体価格 ¥1,400(+税)
フリーランスライター。東京農業大学卒業後、自然体験活動に従事。2014年よりフリーランスライターに。ライフスタイル、エンタメ、レシピ作成記事などを執筆。ペーパー自然観察指導員(日本自然保護協会)。「もともと宮中行事だった七夕はカジノキの葉に、願いを書いていたそう。江戸時代に庶民に広がると、身近にあったタケやササを使い始めたそうなので、タケとササで、七夕飾りはどちらかが間違いということはないようです」