たねから出てくる
最初の葉は何枚?
『プチペディア』で迫る、
昆虫・植物・動物のヒミツ
©︎ hany ciabou/nature pro. /amanaimages
『プチペディア』で迫る、
昆虫・植物・動物のヒミツ
春は植物がたねから目覚め始める季節です。最初に出てくる葉を「双葉」ということがありますが、どのたねからも2枚の葉が出てくるわけではないのです。NATURE & SCIENCE が手がける『PETiT PEDiA にほんの植物』(アマナイメージズ)の掲載記事から再構成してお届けします。
もし「植物の芽生えの絵を描いて」と言われたら、きっと多くの人が1本の軸に2枚の小さな葉がついた「双葉*1 」の姿を描くのではないでしょうか。
*1 双葉(ふたば)
「双子葉類」の最初の葉。たねから最初に出てくる葉のことを、植物学的には「子葉(しよう)」と呼ぶ。多くの草花が、子葉が2枚ある双子葉類の仲間(ただし、ニリンソウやコマクサなど一部の双子葉類の子葉は1枚) 。双子葉類の植物の葉には、網目のような脈があるのが特徴。
どんぐりから芽生えるクヌギやコナラなどの仲間は、芽に子葉がないように見えますが、実は、どんぐりの中に、栄養分がある厚い2枚の子葉が入っています。
これらの双子葉類に対して、「単子葉類」の仲間は最初の葉が1枚です。
単子葉類の植物にはススキやユリ、イネ、ヒガンバナ、ランなどの仲間が含まれます。葉がスッと長細く、平行線状の脈があるのが共通点です(サトイモの仲間など例外もあります)。ほとんどの単子葉類は草ですが、ヤシやタケなど、樹木に分類される植物もあります。
双子葉類は、単子葉類から葉が増えて2枚に進化したと思われがちなのですが、実は、進化の過程は逆。双子葉類から単子葉類が発生したことがわかっています。しかし、なぜ1枚になったのかまでは、詳しくわかっていません。
双子葉類と単子葉類は、被子植物*2 という植物の分類にまとめられます。
*2 被子植物
胚珠(はいじゅ)というたねの元になる部分が子房(しぼう)に覆われている植物。胚珠が子房に覆われておらず、むき出しになっている植物のことは「裸子植物」と呼ぶ。
一方、裸子植物の芽を見ると、例えばソテツやイチョウの芽は2枚なのに対し、スギの芽は2~3枚、マツの芽は葉が6~7枚など、種類によって葉の枚数はかなり異なっています。
小学校で学ぶように、水、酸素、気温などの必要な条件を満たせば、たねは発芽します。
しかし、多くの植物で最初に出てくるのは、幼根と呼ばれる「根」です。「発芽=芽が発する」と呼びますが、一番に出てくるのは、芽ではなかったのですね。
なお、「芽生え」という言葉は、子葉が伸びた時点の姿を表しています。先に根を生やし、身体を支えたり、養分や水分を吸収する準備をしたりしてから、葉を伸ばしていくのです。
春は、いたるところで芽生えが見られる季節。庭や植物園でなくとも、近所の公園や花壇など、土があるところなら、さまざまな植物の芽生えを観察することができます。
たとえ植物の名前がわからなくても、子葉の枚数、本葉*3 と子葉の違いなどを丁寧に観察して、後から調べてみると、意外な発見があるかもしれませんよ。
*3 本葉(ほんば)
子葉の後に出てくる葉のこと。
この記事の元になった本は……
プチペディアブック「にほんの植物」(アマナイメージズ)
植物のステージであるたねや実、発芽、生長、開花、枯れの5つの章に分けて、さまざまな疑問と解答を紹介しています。取り上げた疑問はトリビア的なものではなく、植物の全体像を知るための近道となるものです。ぜひ、お子さんと一緒にコミュニケーションしながら読んでみてください。好奇心を育み、植物に興味を持つきっかけとなるはずです。
http://petitpedia.jp
[企画・編集]ネイチャー&サイエンス
[監修]小林正明(元飯田女子短期大学教授)[文]大地佳子
[判型]B6変
[ページ数]152ページ
本体価格 ¥1,400(+税)
フリーランスライター。ライフスタイル記事やインタビュー記事を書いています。生き物や農林業の話題が好きです。ペーパー自然観察指導員(日本自然保護協会)。「春の気配を感じて、一斉に芽吹く、たくさんのたねたち。スタートの合図を聞いて一斉に走り出すアスリートのようで、『がんばれ~』と応援してしまいます」