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綿毛を飛ばすタンポポの戦略

綿毛を飛ばす
タンポポの戦略

『プチペディア』で迫る、
昆虫・植物・動物のヒミツ

編集・構成/田中 いつき

©arc image gallery /amanaimages

庭先からちょっとした植え込み、山の中まで、さまざまな場所で見かけるタンポポ。花も愛らしいですが、綿毛になった姿もキュートでメルヘンを感じますよね。さて、この綿毛、どこまで飛んでいくのでしょうか? NATURE & SCIENCE が手がける『PETiT PEDiA にほんの植物』(アマナイメージズ)の掲載記事から再構成してお届けします。

風に乗ってどこまでも

子どもたちはタンポポの綿毛を吹き飛ばす遊びが大好きです。タンポポの放射状の綿毛の下には、小さい種子がパラシュートのようにぶら下がり、風に乗ってフワフワと運ばれていきます。

©arc image gallery /amanaimages

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タンポポの綿毛の飛行距離は、正確にはわかっていません。実際には風の強さや湿度、生育場所など様々な条件によってかなり差が出てくるからです。タンポポの綿毛を1.5mの高さから落とすと、着地までに6秒近くかかったというデータもあるそうです。 綿毛によって滞空時間が長くなるため、浮かんでいる間にタイミングよく風で舞い上がり、天気の良い日に上昇気流に乗れば、かなり長い距離を移動できるでしょう。


倒れた茎がまた立ち上がる

タンポポはなぜ綿毛を飛ばすのでしょうか。それは、種子を遠くまで飛ばすためです。

©IWAO KATAOKA/SEBUN PHOTO /amanaimages

©IWAO KATAOKA/SEBUN PHOTO /amanaimages

動物のように自分で動くことのできない植物にとっては、種子の時期が生息範囲を広げるチャンス。根に縛られない自由な形の間に、転がったり、水に浮いたり、鳥に食べられたりして移動していきます。タンポポはその手段として、風に飛ばされる方法を選んだのです。


花の時期が終わったタンポポは一度、花を閉じ、茎が地面際に倒れこむようにだらりとなります。その間に種子を作り、綿毛を作ります。

花を閉じて倒れこんでいくタンポポ ©NAOYA MARUO/SEBUN PHOTO /amanaimages

花を閉じて倒れこんでいくタンポポ
©NAOYA MARUO/SEBUN PHOTO /amanaimages

綿毛ができ、種子を飛ばす準備ができたタンポポは再び、茎を立ち上がらせます。遠くまで飛ばすため、周りの草よりも綿毛部分が高くなるように、しっかり茎を伸ばしてから綿毛を開きます。

綿毛のときの茎は、周りの草よりも背を高く伸ばす ©Tetsuya Tanooka/a.collectionRF /amanaimages

綿毛のときの茎は、周りの草よりも背を高く伸ばす
©Tetsuya Tanooka/a.collectionRF /amanaimages

綿毛が飛び終わった茎は役目を終え、やがて枯れていきます。


どんな種類のタンポポがある?

カントウタンポポ 花の裏の総苞外片(そうほうがいへん)と呼ばれる部分が反り返らず、すっきりしている。 ©mizuki/a.collectionRF /amanaimages

カントウタンポポ 花の裏の総苞外片(そうほうがいへん)と呼ばれる部分が反り返らず、すっきりしている。
©mizuki/a.collectionRF /amanaimages

ひと口に「タンポポ」と言いますが、その種類は細かく分かれ、日本在来のものは20種以上 に分かれます。関東を中心に生えるカントウタンポポ、西日本を中心に生えるカンサイタンポポ、外来種で今や全国的に見られるセイヨウタンポポなどは聞いたことがあるかもしれませんね。

カンサイタンポポ ©iimura shigeki/nature pro. /amanaimages

カンサイタンポポ
©iimura shigeki/nature pro. /amanaimages

その他にエゾタンポポ、シナノタンポポ、トウカイタンポポ、シロバナタンポポなどの種類があり、地域によって生えているタンポポが異なります。

シロバナタンポポ ©MASAAKI TANAKA/SEBUN PHOTO /amanaimages

シロバナタンポポ
©MASAAKI TANAKA/SEBUN PHOTO /amanaimages


現在、都市部で見られるタンポポの多くは外来種のセイヨウタンポポです。日本に昔からある在来種のタンポポと比べ、実の重量が軽いので、より遠くまで飛ばされやすくなっています。ただし、外来種と在来種の雑種も多くなり、中間的な性質を持つものも増えています。

セイヨウタンポポ 花の裏の総苞外片がめくれている。 ©morinokumasan/a.collectionRF /amanaimages

セイヨウタンポポ 花の裏の総苞外片がめくれている。
©morinokumasan/a.collectionRF /amanaimages

また、外来種のアカミタンポポもその生息範囲を広げてきており、環境省による「我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト」に「外来タンポポ種群」 として、セイヨウタンポポとともに「重点対策外来種」に指定されています。

もともとは牧草として、輸入されたものから、想定を超えて繁殖してしまった外来タンポポたち。在来種の生育範囲に入り込み、在来のタンポポと交雑したり、他の植物を駆逐してしまったりと困りものです。

でも、外来タンポポの立場からすると、人間をうまく利用して生息範囲を広げたとも考えられます。自力で移動できない植物の生存戦略と考えると、たくましさを感じませんか。


これってタンポポ?

タンポポによく似た植物もたくさんあります。ブタナは花だけ見ればタンポポそっくり。ですが、花の根元で茎が枝分かれしていることで見分けがつきます。さらに、茎の色はつやのある濃い緑色で、タンポポより背が高いことが多いようです。

ブタナ ©Gakken /amanaimages

ブタナ
©Gakken /amanaimages

公園の植え込みなどに姿を現すノゲシも、その花はタンポポそっくり。ですが、こちらは1本の茎に複数の花がつき、葉も上の方につくことで見分けがつきます。ブタナもノゲシもタンポポと同じキク科の植物なので、花がよく似ているのです。花が終わったら綿毛をつけるところも同じです。

ノゲシ ©imai kunikatsu/nature pro. /amanaimages

ノゲシ
©imai kunikatsu/nature pro. /amanaimages

身近な花、タンポポ。綿毛がどこまで飛ぶか競争したり、地面に落ちるまでの時間を測ってみたり、ブタナやノゲシの綿毛と飛び方を比べてみたり、といろいろなことを試してみてください。

©Steve Bloom/SteveBloom /amanaimages

©Steve Bloom/SteveBloom /amanaimages

この記事の元になった本は……
プチペディアブック「にほんの植物」(アマナイメージズ)
植物のステージであるたねや実、発芽、生長、開花、枯れの5つの章に分けて、さまざまな疑問と解答を紹介しています。取り上げた疑問はトリビア的なものではなく、植物の全体像を知るための近道となるものです。ぜひ、お子さんと一緒にコミュニケーションしながら読んでみてください。好奇心を育み、植物に興味を持つきっかけとなるはずです。 
http://petitpedia.jp

[企画・編集]ネイチャー&サイエンス
[監修]小林正明(元飯田女子短期大学教授)[文]大地佳子
[判型]B6変 
[ページ数]152ページ
本体価格 ¥1,400(+税)

Profile
Editor
田中 いつき Itsuki Tanaka

フリーランスライター。東京農業大学卒業後、自然体験活動に従事。2014年よりフリーランスライターに。ライフスタイル、エンタメ、レシピ作成記事などを執筆。ペーパー自然観察指導員(日本自然保護協会)。「散歩のときにタンポポの綿毛のタネの数を数えたところ、少ないもので60個、多いもので100個程度でした。今度はブタナのタネの数も数えてみたいと思っています」

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