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アマナとひらく「自然・科学」のトビラ
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機械を使わず、写真を撮るには?

機械を使わず、
写真を撮るには?

浅間国際フォトフェスティバル
ワークショップ レポート

写真・文/猪飼 ひより(amana)

2019年9月14日から11月10日にかけて、長野県の御代田(みよた)町をメイン会場に、軽井沢町や群馬県長野原町(北軽井沢)の広域で「浅間国際フォトフェスティバル 2019」が開催されています。同フェスティバルへの出展作品を制作する、現地小学生たちの姿をフォトレポート。光と化学が生み出す芸術表現である「写真」の原点を、一人のフォトグラファーが考えました。

浅間国際フォトフェスティバルのメイン会場になる御代田町は、浅間山をのぞむ、とても自然豊かなところです。

このフェスティバルに展示される「日光写真」*1 をワークショップでつくる現地の子どもたちの様子を追いました。


2019年6月27日は御代田南小学校の5年生、28日は御代田北小学校の6年生を対象に「総合的な学習の時間」内の授業として、写真の原点を体感しました(協力:御代田町教育委員会)
2019年6月27日は御代田南小学校の5年生、28日は御代田北小学校の6年生を対象に「総合的な学習の時間」内の授業として、写真の原点を体感しました(協力:御代田町教育委員会)
2019年6月27日は御代田南小学校の5年生、28日は御代田北小学校の6年生を対象に「総合的な学習の時間」内の授業として、写真の原点を体感しました(協力:御代田町教育委員会)

2019年6月27日は御代田南小学校の5年生、28日は御代田北小学校の6年生を対象に「総合的な学習の時間」内の授業として、写真の原点を体感しました(協力:御代田町教育委員会)


2校で行われたワークショップのタイトルは「青色の日光写真で御代田の自然をプリントしよう!!」。講師は進藤博信(浅間国際フォトフェスティバル 副実行委員長/株式会社アマナ代表取締役社長兼グループCEO)が務めました
2校で行われたワークショップのタイトルは「青色の日光写真で御代田の自然をプリントしよう!!」。講師は進藤博信(浅間国際フォトフェスティバル 副実行委員長/株式会社アマナ代表取締役社長兼グループCEO)が務めました
2校で行われたワークショップのタイトルは「青色の日光写真で御代田の自然をプリントしよう!!」。講師は進藤博信(浅間国際フォトフェスティバル 副実行委員長/株式会社アマナ代表取締役社長兼グループCEO)が務めました

2校で行われたワークショップのタイトルは「青色の日光写真で御代田の自然をプリントしよう!!」。講師は進藤博信(浅間国際フォトフェスティバル 副実行委員長/株式会社アマナ代表取締役社長兼グループCEO)が務めました

*1 日光写真

太陽光に含まれる紫外線と、紫外線に反応する薬品の力を借りてプリントする方法。太陽の光が強く当たったところは濃く、当たらなかったところは変化せずに白くなる。


その1:印画紙をつくる

私は通っていた高校がとても田舎にあり、通学時間に見る空や自然が好きでした。「この景色を形に残したい」と思ったのがきっかけで、写真を撮り始めました。

スポンジに感光液(シュウ酸鉄アンモニウム)と現像液(フェリシアン化カリウム)を混合した薬品を含ませ、紙全体に塗っていきます
スポンジに感光液(シュウ酸鉄アンモニウム)と現像液(フェリシアン化カリウム)を混合した薬品を含ませ、紙全体に塗っていきます
スポンジに感光液(シュウ酸鉄アンモニウム)と現像液(フェリシアン化カリウム)を混合した薬品を含ませ、紙全体に塗っていきます

スポンジに感光液(シュウ酸鉄アンモニウム)と現像液(フェリシアン化カリウム)を混合した薬品を含ませ、紙全体に塗っていきます


その2:植物を採集する

子どもたちを撮影していて、「こんな面白い葉っぱがある!」と普段、身の回りにあるものをよく見て探求する姿に、昔の自分と重なる部分がありました。

印画紙をつくったら、教室の外へ。写真にしたい植物を探して集めます
印画紙をつくったら、教室の外へ。写真にしたい植物を探して集めます
印画紙をつくったら、教室の外へ。写真にしたい植物を探して集めます

印画紙をつくったら、教室の外へ。写真にしたい植物を探して集めます


その3:印画紙に植物を載せる

カメラを使わず、印画紙の上に直接モノを置き、光を当ててつくる写真を「フォトグラム」と呼びます。

ふたりで協力して作品をアクリル板で挟み、太い輪ゴムでとめます。その後、太陽の下へ
ふたりで協力して作品をアクリル板で挟み、太い輪ゴムでとめます。その後、太陽の下へ
ふたりで協力して作品をアクリル板で挟み、太い輪ゴムでとめます。その後、太陽の下へ

ふたりで協力して作品をアクリル板で挟み、太い輪ゴムでとめます。その後、太陽の下へ


その4:太陽の光を当てる

外で日光を当てて、青い色がだんだん浮かび上がってくるところが、とても印象に残りました。これは「サイアノタイプ」*2 と呼ぶ技法だそうです。

感光すると、青くなっていく印画紙。すっかり青くなったら、教室に戻ってアクリル板を外します
感光すると、青くなっていく印画紙。すっかり青くなったら、教室に戻ってアクリル板を外します
感光すると、青くなっていく印画紙。すっかり青くなったら、教室に戻ってアクリル板を外します

感光すると、青くなっていく印画紙。すっかり青くなったら、教室に戻ってアクリル板を外します

*2 サイアノタイプ(cyanotype)

1842年に英国の天文学者・数学者のジョン・ハーシェルが発明した、塩鉄の化学反応を利用した日光写真。翌年、植物学者で写真家のアンナ・アトキンスがこの手法で海洋植物の標本集を出版している。銀の化学反応で像の濃淡を移す銀塩(フィルム)写真よりも安価で、青色の濃淡で像を描くのが特徴。濃紺を意味するギリシャ語cyanos(シアノス)を語源とし、かつては建築の設計図面や出版物の出力見本などに多く使われ「青写真」「青焼き」と呼ばれた。


その5:水で洗って、乾かす

同じ手法で作成しているけれども、完成した作品にはそれぞれの表現があっていいなと思いました。

バットに入れて、水道水でよく洗い流します。ペーパーに挟んで、水気を切ったらでき上がり。PHOTO MIYOTAのメイン会場でも飾られています
バットに入れて、水道水でよく洗い流します。ペーパーに挟んで、水気を切ったらでき上がり。PHOTO MIYOTAのメイン会場でも飾られています
バットに入れて、水道水でよく洗い流します。ペーパーに挟んで、水気を切ったらでき上がり。PHOTO MIYOTAのメイン会場でも飾られています

バットに入れて、水道水でよく洗い流します。ペーパーに挟んで、水気を切ったらでき上がり。PHOTO MIYOTAのメイン会場でも飾られています


今でこそ身近になった写真に対して、生徒の皆さんが新しいかたちで触れることができ、教室が素直でステキな表情でいっぱいでした。


私にとっての、科学

ボタン一つで写真が撮影できる今この時代に、科学(化学)の力によって、また別の角度から「写真」を学ぶことができるのは、とても興味深い体験でした。

私にとって科学というのは、新たな可能性を見つけるための手段なのだと思います。


浅間国際フォトフェスティバル 2019
PHOTO MIYOTA
テーマ「TRANSFORM イメージの化学」

会期:2019年9月14日(土)〜11月10日(日)
開催時間:10:00 〜 17:00 (最終入場 16:30)
入場料:1,500円(税込)※一部無料エリア有、中学生以下無料
メイン会場:御代田写真美術館「MMoP (旧メルシャン軽井沢美術館)」
(長野県北佐久郡御代田町馬瀬口1794-1)

https://asamaphotofes.jp/

2019年9月23日(月・祝)に引き続き、10月19日(土)にも一般来場者に向けてこのワークショップを開催します。下記のページより、ぜひお申し込みください。

青色の日光写真で御代田の自然をプリントしよう!!
https://asamaphotofes.jp/event/cyanotype-workshop_20190923
時間:11:00~14:00 参加料:2,000円 定員:30名
会場:御代田写真美術館「MMoP (旧メルシャン軽井沢美術館)」


Profile
Photographer
猪飼 ひより Hiyori Ikai

amanaフォトグラファー。「今回、この子どもたちがつくった日光写真が『PHOTO MIYOTA』のメイン会場で展示されています。ぜひ見に来ていただきたいです!
https://amana-visual.jp/photographers/Hiyori_Ikai

Editor
神吉 弘邦 Hirokuni Kanki

NATURE & SCIENCE 編集長。コンピュータ誌、文芸誌、デザイン誌、カルチャー誌などを手がけてきた。「開幕に向け、設営まっただ中の御代田町を訪問しました。メルシャン軽井沢美術館の時代に催された『もうひとつの森へ』展以来、10年ぶり。その時は気づかなかった浅間山の稜線の美しさにハッとしました。自然に向ける眼も研ぎ澄ましてくれるのが写真の力です。メイン会場隣りの『浅間縄文ミュージアム』も縄文ファン、火山に関心ある方にオススメです

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