機械を使わず、
写真を撮るには?
浅間国際フォトフェスティバル
ワークショップ レポート
浅間国際フォトフェスティバル
ワークショップ レポート
2019年9月14日から11月10日にかけて、長野県の御代田(みよた)町をメイン会場に、軽井沢町や群馬県長野原町(北軽井沢)の広域で「浅間国際フォトフェスティバル 2019」が開催されています。同フェスティバルへの出展作品を制作する、現地小学生たちの姿をフォトレポート。光と化学が生み出す芸術表現である「写真」の原点を、一人のフォトグラファーが考えました。
浅間国際フォトフェスティバルのメイン会場になる御代田町は、浅間山をのぞむ、とても自然豊かなところです。
このフェスティバルに展示される「日光写真」*1 をワークショップでつくる現地の子どもたちの様子を追いました。
*1 日光写真
太陽光に含まれる紫外線と、紫外線に反応する薬品の力を借りてプリントする方法。太陽の光が強く当たったところは濃く、当たらなかったところは変化せずに白くなる。
私は通っていた高校がとても田舎にあり、通学時間に見る空や自然が好きでした。「この景色を形に残したい」と思ったのがきっかけで、写真を撮り始めました。
子どもたちを撮影していて、「こんな面白い葉っぱがある!」と普段、身の回りにあるものをよく見て探求する姿に、昔の自分と重なる部分がありました。
カメラを使わず、印画紙の上に直接モノを置き、光を当ててつくる写真を「フォトグラム」と呼びます。
外で日光を当てて、青い色がだんだん浮かび上がってくるところが、とても印象に残りました。これは「サイアノタイプ」*2 と呼ぶ技法だそうです。
*2 サイアノタイプ(cyanotype)
1842年に英国の天文学者・数学者のジョン・ハーシェルが発明した、塩鉄の化学反応を利用した日光写真。翌年、植物学者で写真家のアンナ・アトキンスがこの手法で海洋植物の標本集を出版している。銀の化学反応で像の濃淡を移す銀塩(フィルム)写真よりも安価で、青色の濃淡で像を描くのが特徴。濃紺を意味するギリシャ語cyanos(シアノス)を語源とし、かつては建築の設計図面や出版物の出力見本などに多く使われ「青写真」「青焼き」と呼ばれた。
同じ手法で作成しているけれども、完成した作品にはそれぞれの表現があっていいなと思いました。
今でこそ身近になった写真に対して、生徒の皆さんが新しいかたちで触れることができ、教室が素直でステキな表情でいっぱいでした。
ボタン一つで写真が撮影できる今この時代に、科学(化学)の力によって、また別の角度から「写真」を学ぶことができるのは、とても興味深い体験でした。
私にとって科学というのは、新たな可能性を見つけるための手段なのだと思います。
浅間国際フォトフェスティバル 2019
PHOTO MIYOTA
テーマ「TRANSFORM イメージの化学」
会期:2019年9月14日(土)〜11月10日(日)
開催時間:10:00 〜 17:00 (最終入場 16:30)
入場料:1,500円(税込)※一部無料エリア有、中学生以下無料
メイン会場:御代田写真美術館「MMoP (旧メルシャン軽井沢美術館)」
(長野県北佐久郡御代田町馬瀬口1794-1)
2019年9月23日(月・祝)に引き続き、10月19日(土)にも一般来場者に向けてこのワークショップを開催します。下記のページより、ぜひお申し込みください。
青色の日光写真で御代田の自然をプリントしよう!!
https://asamaphotofes.jp/event/cyanotype-workshop_20190923
時間:11:00~14:00 参加料:2,000円 定員:30名
会場:御代田写真美術館「MMoP (旧メルシャン軽井沢美術館)」
amanaフォトグラファー。「今回、この子どもたちがつくった日光写真が『PHOTO MIYOTA』のメイン会場で展示されています。ぜひ見に来ていただきたいです!」
https://amana-visual.jp/photographers/Hiyori_Ikai
NATURE & SCIENCE 編集長。コンピュータ誌、文芸誌、デザイン誌、カルチャー誌などを手がけてきた。「開幕に向け、設営まっただ中の御代田町を訪問しました。メルシャン軽井沢美術館の時代に催された『もうひとつの森へ』展以来、10年ぶり。その時は気づかなかった浅間山の稜線の美しさにハッとしました。自然に向ける眼も研ぎ澄ましてくれるのが写真の力です。メイン会場隣りの『浅間縄文ミュージアム』も縄文ファン、火山に関心ある方にオススメです」