春を告げる風景
「雪形」
©︎SHOHO IMAI/a.collectionRF /amanaimages
うららかな春。冷たい雪もゆるみ、山々が白い衣を脱ぎはじめるころ、山肌に残った雪がさまざまな模様をつくり出します。その模様をよく見てみると……あれ? 何かに見えませんか?
山肌の濃い色と、白い名残り雪とのコントラストで一面に模様があらわれ、春の山はまるでキャンバスのようです。
この春先の山の模様を何かに見立てたものを、「雪形(ゆきがた)」とよんでいます(「雪絵」「残雪絵」とも)。
春のはじめは、雪の間から山肌が少しのぞいた「黒抜き模様」が姿をあらわします。雪が少なくなるにつれて山肌の露出が多くなり、今度は、窪みにわずかに残った雪がつくる「白抜き模様」があらわれてきます。
さて、これからご紹介する山々の、どこに雪形があるかわかりますか?
(答えは記事の最後に)
人々は古くから、生きものや人の姿など身近なものに見立てて、雪形に親しんできました。そして昔は、この雪形があらわれる時期を種まきや田植えをはじめる目安にしていたのです。
また、消え残った雪の形で農作物のできを占う「雪占」をしたりと、雪形は農耕と密接に結びついていました。
全国にある雪形の数は300とも400ともいわれています。北海道から中部地方にかけての積雪の多い地域でよく見られ、特に新潟や長野に多く、次いで青森、岩手、秋田、山形、福島などでも多く見られます。
雪の多い米どころでは、昔から雪形を農業の頼りにしていたことがうかがえますね。
雪形の見頃は4月から6月ごろにかけて。昔から伝わる雪形を楽しむのはもちろん、山をよく観察すれば、新しい雪形を見つけられるかもしれませんよ。
*雪形のこたえ(跳ね馬、雪うさぎ、種まきじいさん)
おもな参考文献:
『ひろちか先生に学ぶこよみの学校』中牧弘允 著(つくばね舎)
『里山のことのは』ネイチャー・プロ編集室 著(幻冬舎)
『暦の科学(BERET SCIENCE)』片山真人 著(べレ出版)
残雪の山は、冬眠から覚めたばかりで、うっすらと目をあけているように見えます。季節は「山眠る」から「山笑う」へ。いろいろありますが、前向きにいきましょう!