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雷はどこに落ちるか?

雷はどこに落ちるか?

生命にも不可欠な自然現象

文/田中 いつき

©︎ F1online digitale Bildagentur GmbH / Alamy /amanaimages

雷予報が多く出る季節です。危険な行動と安全な行動にはどんな違いがあるのでしょうか? また、雷が鳴り出したときに、安全な場所はどこなのでしょう。災害を引き起こすばかりとは言えない、雷が果たしている植物の生育のためにもたらす役割についても解説します。

夏になると多くなる雷の予報。ゴロゴロと鳴る音は多くの人が聞いたことがあるでしょう。

青空に浮かぶ「入道雲」として夏を代表する光景にもなっている、フワフワしたソフトクリームのような形の積乱雲が「雷の巣」。この積乱雲が急激に発達するときに雷が発生することが多いのです。

©︎ daj /amanaimages

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積乱雲は地上付近に温かい空気の層があり、上空には冷たい空気がある状態で空気の対流が起きやすくなることから発生します。地上付近の空気が、上空で冷やされ、積乱雲になるのです。短時間のうちに発達することが多く、夕立のように急な大雨や雷を発生させます。激しいときにはひょう*1 や竜巻などを引き起こすこともあります。

*1 ひょう

関連記事:夏に氷が降る不思議 「ひょう」ができるメカニズム
https://nature-and-science.jp/hail/


雷は金属に落ちるの?

以前は金属を身につけていると雷が落ちやすいと言われていましたが、現在ではこの説は否定されています。雷が落ちた人の時計や衣服の金属分が溶けていたり、金属に触れていた箇所の皮膚が火傷になっていたりしたこと、また傘やゴルフクラブなどの金属を利用したものに落雷したことから勘違いされたようです。

©︎ Jakob Helbig/Image Source RF /amanaimages

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実際にはベルトや時計などを身につけていても問題ないそう。むしろ、身につけた金属製品には、人体を流れる電流を減らす効果があることが確認されています。

実は、雷が鳴っているときに危険なのは、「周りより背の高い状態でいること」です。

雷はその地点で「背の高い物体」へ落ちる性質を持っています。傘、ゴルフクラブなどは、人の頭より高いところに掲げることが多くなるものです。周囲が平らだとその地点における背の高い物体になってしまい、そこへめがけて雷が落ちてくるという訳です。

そのため、木の下で雨宿りするのも危険です。

©︎ pasmal/a.collectionRF /amanaimages

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落雷は木を爆発的に破壊することがあります。さらに、人の体は水分が多く通電しやすい性質を持っています。木に落雷した電流が人体へ伝わる側撃*2 という現象が起きることがあり、これにより怪我をする人が多いのです。

*2 側撃(そくげき)

落雷を受けたものから、電流が他のものへ流れる現象。人体は水分が多く通電しやすいため、直接落雷していなくても、電気が伝わることがある。


 
また、雷というと山のイメージがありますが、雷が鳴っていれば、川岸や海辺でも危険です。下流域の河川敷や海岸は開けており、堤防は、他より一段高くなっています。堤防の上が道だと、つい歩いてしまいそうになるのですが、そうすると歩行者がそのエリアで一番「背の高い物体」になってしまうことに。なるべく早く降りて、建物へ避難しましょう。

もちろん、山で大きい岩陰に隠れるのも、テントやあずまやに避難するのも危険な行為です。とにかく雷が鳴り始めてからも屋外にいるというのは危険なのです。


安全な場所は?

では、雷が鳴り出したときに、安全な場所はどこなのでしょうか?

一番いいのは、もちろん避雷針*3 のついた建物です。

*3 避雷針(ひらいしん)

落雷被害を防ぐために建物に設置する装置。従来は避雷針へ落雷を誘導して、電流を地表へ逃がす方法が主流だったが、雷を落とさせない新しいタイプの避雷針が実用化され、広まりつつある。

 
避雷針がついていなくても、鉄筋コンクリート製や木造建築の建物なら、仮に雷が落ちても、電気は壁を通して地面へ流れていくので、基本的には安全です。避雷針がない場合は、万が一、建物へ落雷すると、電気器具、天井・壁から側激を受ける可能性がありますので、それらから1 m以上離れるようにすると安全です。

©︎ ROBERTO PERI/Image Source RF /amanaimages

©︎ ROBERTO PERI/Image Source RF /amanaimages

軒先での雨宿りも危険です。必ず屋内へ避難するようにしましょう。しっかりした建物がなければ、クルマの中への避難も悪くはありません。たとえ落雷したとしても、クルマならタイヤを通って雷が通り抜けますし、また車内に電気は入り込みにくく、安全とされています。ただし、窓を開けたり、窓ガラスに体をつけたりはしないようにしてください。


雷の役割

人間にとって、危険なことばかりのように思える雷。ですが、自然界においては重要な役割をもっています。

©︎ Mitsushi Okada/a.collectionRF /amanaimages

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空気中に多い窒素*4 は植物の生育に欠かすことのできない元素ですが、空気中にあっても、通常、植物は取り込むことができません。

窒素固定作用を持つ微生物(根粒菌*5)が死んだ後に土壌となったときや、根粒菌と共生するマメ科植物などが枯れて土壌になったものを取り込める程度のことのようです。

*4 窒素(ちっそ)

空気中に大量に含まれ、リン酸、カリとともに植物の成長に欠かせない3大元素の1つ。農業の肥料にも使われている。元素記号は「N」。

*5 根粒菌(こんりゅうきん)

マメ科の植物の根に「根粒」という粒を形成する菌。窒素を取り込み、一部を植物へ供給する代わりに、植物から光合成した栄養分の一部を受け取る共生関係にある。


 
そこにプラスして、窒素を提供する役割を持つのが雷なのです。雷の放電により空気中の窒素が酸化され、雨に溶け込みやすくなり、土壌を経由して植物の体に取り込まれていきます。窒素を取り込んだ植物は成長が早くなるのです。

雷は「稲妻」と呼ぶこともあります。雷がイネの成長と密接な関係にあることを昔の人は知っていたのではないでしょうか。

©︎ Mitsushi Okada/a.collectionRF /amanaimages

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一方、キノコを栽培している人たちの間でも、経験的に雷が多い年は成長が良いということが言われてきました。が、こちらはどうやら、落雷による電気刺激そのものが成長を促しているのではないか、また、キノコの生える場所にいた雑菌が死ぬからでは、とも言われています。

被害があることを考えれば、地面に落ちることが少ない方がよいのでは? と思える雷ですが、自然界には大切な現象。雷すら利用する植物やキノコにたくましさを感じますね。

©︎ Ikonica/Masterfile /amanaimages

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Profile
Writer
田中 いつき Itsuki Tanaka

フリーランスライター。東京農業大学卒業後、自然体験活動に従事。2014年よりフリーランスライターに。ライフスタイル、エンタメ、レシピ作成記事などを執筆。ペーパー自然観察指導員(日本自然保護協会)。「莫大なエネルギーを発生させる雷。溜められるような技術が開発されることを期待しています」

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