モコモコ、真っ白。
冬の動物たちに会う!
エゾモモンガやホンドテン、
プレーリードッグまで
エゾモモンガやホンドテン、
プレーリードッグまで
夏はすっきりしていた動物も冬になると、モフモフ・モコモコ。毛や羽が密に生え、体に脂肪を蓄えた防寒仕様です。体が真っ白になる動物が見られるのは、冬だけのお楽しみ。「たまたま夏に茶色く、冬に白くなる者が環境に適応して生き残った」という進化のドラマも感じられます。
「前は茶色だったのにこんなに真っ白になるの? かわいい!」
2020年1月2日。雪景色の札幌市円山動物園では、真っ白なエゾユキウサギが大歓声を浴びていました。2円切手でもおなじみの動物です。
「毎年冬は、路面が見えることなんてめったにないんですよ」とタクシーの運転手さんが教えてくれた通り、今年は北海道も暖冬なのでしょう。「うちの裏山にもエゾユキウサギがいて、雪が降る前に白くなるんだよね」「逆に目立って敵に見つかりそう!」という地元カップルの会話も聞こえます。やっと雪が積もり、エゾユキウサギの白い毛が見事な保護色として役立っています。目と耳の先だけが黒く、さながら水墨画。
エゾユキウサギはユキウサギの亜種で、北海道全域に分布。日本に生息するウサギとして最大の種です。夏は褐色ですが、冬はすべての個体が白化します。本州以南には二ホンノウサギがおり、この種も冬は白くなりますが、積雪の少ない地方などでは夏も冬もほぼ同色です。
ちなみに、よこはま動物園ズーラシアでは、二ホンノウサギの亜種であるトウホクノウサギを飼育しています。
さて、エゾユキウサギですが、じっとしているときは体温が逃げないよう体を丸めていて、まるでお餅。実は長い脚を隠し持っていて、1.5メートルほどの大ジャンプができます。
また、足の裏は幅広で毛が密に生え、このため雪に埋もれることなく駆け回れます。体格に対して耳が小さいのは、耳から体温が逃げるのを抑えるため。これを「アレンの法則」と言います。
円山動物園ではエゾモモンガも淡いグレー系の雪仕様(夏は茶褐色)に変身していました。夜行性動物なのに、奇跡的にお食事風景が撮れたのでご紹介します。
エゾユキウサギ、エゾモモンガともに、北海道の気候に適応し、10、11月ぐらいから白くなりはじめ、翌年の5月前後ぐらいに夏毛に戻ると聞きました。
北海道は遠くて行けない! という人は、井の頭自然文化園(東京)もいいですよ。ニホンリスを間近で見られる「リスの小径」は必見。よくなれたリスが手や肩に乗ってきてくれることもあります。ニホンリスも夏は赤褐色、冬はグレー系の褐色に変身。体つきも、冬は毛量と脂肪が増えてぽっちゃり気味になっています。
個体差はありますが、毎年9月下旬ぐらいから冬毛に変わりはじめ、翌年5月ぐらいに夏毛に切り替わるそうです。
井の頭文化園なら、ホンドテンにもご注目。夏は全体的に褐色で顔は黒ですが、冬は体が黄色・頭が白という独特のカラーリングになりますよ。
ニホンテンには体色変化にバリエーションがあり、夏も冬もほぼ同じ体色のスステンと、夏は褐色・冬は黄色のキテンの2型に分けられます。ここでは、11月中旬ぐらいから冬毛、5月ぐらいから夏毛に変わるとのこと。
さらに、井の頭自然文化園なら水鳥も魅力的です。おすすめはオシドリのオス。
頭に長い羽が生え、体は白・紫・深緑・栗色などと色彩感あふれる羽毛ですが、メスは地味めです。オスが派手なのはメスにアピールするためですが、これは繁殖期だけの姿。オシドリなどのカモの仲間は、繁殖期でない時期になるとオスも地味羽になります。この状態を「エクリプス」と呼び、敵に狙われにくくなる利点があります。気候などによりますが、9、10月ごろから翌年4~7月ぐらいまで美しいオスのオシドリが見られます。
SNSで、プレーリードッグがまん丸でまるでヒヨコ! と話題になりました。恩賜(おんし)上野動物園ではオグロプレーリードッグを至近距離で観察できます。
自然界では、1匹のオスと数匹のメスから成る「コテリー」という集団を形成します。上野動物園でも広々とした展示場で多頭飼いをしており、団子のように体を寄せ合う様子も観察できます。
上野動物園といえば、希少なライチョウも。夏は白・黒・茶のまだら模様、冬は全身真っ白です。特別天然記念物だけあって、ガラス越しに遠くからしか見られませんが、生息地である厳しい高山の環境に適応した姿には神々しささえ感じます。
ヒヨコ風プレーリードッグと白いライチョウは、お花見のころまで見られそうとのウワサです。どうぞお早めに。
温暖化しているとはいえ、やっぱり寒い日本の冬。気候の変化に適応するため、夏は短め・薄めの毛や羽、冬は長め・濃いめの毛や羽となることで、体温を調整できます。これが、動物たちの換毛や換羽の機能。冬は白くなったり、柄が変わるパターンの換毛や換羽は身を隠す効果があります。
換毛や換羽はさまざまな要因により起こりますが、日照時間や気温が強く影響すると考えられています。さらにいうと、気温よりも日照時間が動物の生理現象に深く関わるというのが有力です。
昔から日本にいる固有種はもちろんのこと、外国からやってきた動物も、日照時間の変化に合わせて換毛期が現地に適応するようになります。前述のオグロプレーリードッグがよい例です。日本で暮らすようになれば、日本の気候や日照時間に合わせて換毛・換羽をするようになるというわけ。
動物の換毛・換羽は、毎年の気候条件だけでなく年齢などによる個体差がありますが、今年もお花見シーズンぐらいまでは冬毛の動物が見られそう。モフモフでかわいいし適応能力はすごいし、動物万歳!
出版社3社の勤務を経て、編集プロダクション「ミトシロ書房」を創業。雑誌・書籍・Webの編集・執筆を行う。著書に『入りにくいけど素敵な店』『似ている動物「見分け方」事典』など。18歳の猫を看取って以来ペットは飼わず、動物園や水族館の動物愛好の道へ。
http://mito-pub.net/