ジャイアントパンダ
その意外な生態
ⓒ SHASHIN KOUBOU/SEBUN PHOTO /amanaimages
毎年10月28日は上野動物園の提唱する「パンダの日」。これは1972年10月28日に日本で最初に飼育されたジャイアントパンダである「ランラン(蘭蘭)」と「カンカン(康康)」が、上野動物園に来園したことから制定されたものです。今日はジャイアントパンダの秘密に迫ってみましょう。
ジャイアントパンダはネコ目クマ科に分類されるクマの仲間ですが、その独特の模様から、他のクマとは別格の扱いを受けています。目の周囲と耳、足の毛が黒く、その他の体毛は白い姿は、丸めの体型も合わさって、どことなくユーモラス。動物園ではもちろん、本やテレビでも、とても人気の高い動物です。
クマの仲間は、体のわりに小さな子どもを産みますが、ジャイアントパンダの子どもは特に小さく、わずか100 g程度しかありません。母親の体重は100 ㎏ほどですから、約1,000分の1の重さです。これほど体重差がある親子は有袋類以外ではジャイアントパンダぐらいのもの。そのため、赤ちゃんはたいへん未熟な状態で生まれます。
ピンク色の地肌に、白い毛がまばらにしか生えていない赤ちゃんは、とてもジャイアントパンダには見えません。赤ちゃんに黒い毛が生え始めるまでに、生後1週間ほどかかります。1カ月もすると、ようやくジャイアントパンダらしい白黒模様となるのです。大人の肌の色も赤ちゃん同様、ピンク色をしています。
それでは、このユニークな白黒模様にはどんな効果があるのでしょうか。
本来は中国の亜高山帯から高山帯にかけての、竹林に暮らしているジャイアントパンダ。どうして白黒の模様をしているのでしょうか?
雪が降り積もる場所では身を隠すための保護色になっているという説や、目立つことでかえって襲われないための警戒色という説、手先や耳先など冷えやすい部分で太陽熱を吸収しやすくするため、といった説があるものの、正確なところはよくわかっていないようです。
竹林に生息していて、たくさん生えている竹の葉やタケノコを主食としているのはあまりに有名です。しかし、多くのクマ科の動物がそうであるように、果実のほか、本来は昆虫やネズミなどの肉も食べる雑食性です。
そのため、日本の動物園ではリンゴやニンジンのほかに、“パンダだんご”と呼ばれる栄養補助を目的とした食事も与えています。パンダだんごはトウモロコシ粉、大豆粉、生卵、ビタミン類、ミネラルなどを水に溶いて蒸して作る人工飼料です。動物園でも健康で快適に暮らせるように、工夫がされているのですね。
中国政府の調査結果によると、野生のジャイアントパンダは約1,800頭(2015年2月発表)だそうです。2003年の同じ調査では約1,600頭という結果でしたので約17 %増加しています。さまざまな保護活動の成果ですが、野生動物として絶滅が危惧される状況であることに変わりはありません。
現在、世界中で飼育されているジャイアントパンダは400頭を超えています。これは長年の研究・保護活動の成果で、飼育技術が確立してきた結果です。ジャイアントパンダをより増やしていくには、持続的な生息地の保全や、飼育して放獣するシステムを作っていくことが大切です。
ジャイアントパンダについて知ることをきっかけに、私たちが野生動物のためにできることを考えてみませんか。
参考文献・サイト
UENO-PANDA.JP
プチペディアブック「にほんの動物」(アマナイメージズ)
フリーランスライター。東京農業大学卒業後、自然体験活動に従事。2014年よりフリーランスライターに。ライフスタイル、エンタメ、レシピ作成記事などを執筆。ペーパー自然観察指導員(日本自然保護協会)。「『自然界の模様は絵の具で誰かが塗っている』という妄想をよくします。遊び好きのジャイアントパンダの場合、自分から黒色絵の具のバケツに手と足をいれていそうな気がしますが、いかがでしょうか」