腸内細菌から考える未来
アスリートによる社会への貢献
シリーズ・企業探訪④AuB
写真/大竹 ひかる(amana)
アスリートによる社会への貢献
シリーズ・企業探訪④AuB
長年にわたり浦和レッドダイヤモンズで活躍した、元サッカー日本代表の鈴木啓太さん。現役から引退後、腸内環境の解析結果をスポーツやビジネスのパフォーマンス向上に役立てようとベンチャー企業「AuB(オーブ)」を起こしました。腸内細菌叢(そう)が秘める人体への可能性とは? これまでの研究で分かったこと、今後の事業展開についてじっくり伺います。
NATURE & SCIENCEの第2弾特集では、微生物の営みによる「発酵*1」という現象に注目してきた。独特なブルーを生み出す藍染め、コーヒー豆やカカオ豆の精選方法、地球の地下深部に広がる微生物の森、フランスの著名シェフが考える日本の食文化……それらの取材を進めるうち、幾度となくマイクロバイオーム(微生物叢)というキーワードが浮かび上がった。
自らの体内という身近な場所には、最近になって明らかとなりつつある「細菌との共生の仕組み」がある。これまでに多くの研究者が人々の暮らしと健康の向上に寄与しようと、細菌の研究に励んできた。
おぼろげながら現状をつかみたいと思ったとき、腸内細菌をテーマにベンチャーを立ち上げたアスリートの存在に気づいた。2000年から2015年までJリーグ・浦和レッズに所属、日本代表でも活躍したサッカー選手の鈴木啓太さんだ。
現役を引退した鈴木さんが、2015年に起業したスタートアップが「AuB(オーブ)」。創業から2年後には、株式投資型のクラウドファンディングで3,430万円の事業資金を調達したことでも注目された。
研究者ではない鈴木さんが、どのように今の道を選び、どんな意識を腸内細菌へ向けているのだろうか。今回、代表取締役社長の鈴木啓太さんと、取締役で研究責任者を務める冨士川凛太郎さんにインタビューの機会を得た。
*1 発酵
食物をエネルギーとして利用できるようにするための、酸素を必要としない経路。糖の発酵は副産物として酸またはアルコールを生成する。地球に酸素が豊富な大気が存在するようになる前、古細菌のような最初期の生命体は多くが発酵微生物だった。(『土と内臓』キーワード解説「発酵」より)
鈴木さんは、サッカー界からビジネスの世界へ活動のフィールドを移したことが大きな話題になりました。事業の詳細をうかがう前にあらためて、どのような想いから起業されたのでしょうか。
鈴木 セカンドキャリアを思い描く段階で「自分はこの先、何がやりたいのか?」と考え続けていました。すると、以前から「腸内細菌に興味があったこと」「競技人生の中で課題だと感じていたこと」、この2つが重なっていたので、次のキャリアに生かせると思ったんです。
腸内細菌に興味を持ったのは、いつごろからですか?
鈴木 幼いころから、「お腹は人間にとってすごく大事」と言われて育ったんです。スナック菓子ではなく、おやつに枝豆や海苔を食べる子どもでした。高校生ぐらいのとき、母親から「腸内細菌に効くらしいから」としきりにサプリメントを勧められて。まだ、腸内フローラ*2 という言葉も世に広まる前で、どうも実験台にされたというか(笑)。友人から何を飲んでいるのか聞かれても恥ずかしいので「ビタミン剤」とゴマかしていました。
祖母の影響も強かったです。彼女は梅干しのほかに「ぬか漬け」も毎日漬けていて、それが大好きでしたね。家庭によって、手づくりの味は違うじゃないですか。そうした気づきから、いろんな発酵食に興味を持つようになりました。納豆や漬物、キムチなど、今も私の大好物です。
鈴木 こうした家庭環境から得られた知識を、自然に自分のコンディショニングへ生かしながら現役時代を送っていました。現役時代から、お腹の状態と自分自身のコンディショニングが密接に関わっていると感じていたんですね。
それまでアスリートに対しては、トレーニングや食事のメニュー、血液検査といったサポートは進んでいましたが、私の引退直前の時期だと、腸内細菌や腸内フローラという言葉にはピンと来ない選手ばかりでした。でも、腸内細菌の働きを良くすることは、アスリートのパフォーマンスやコンディショニングにおいて、重要な意味があるのは間違いない。この実体験を元にAuBの立ち上げを構想したんです。
そのとき、事業の大まかなロードマップも見えていたんですか?
鈴木 いえ、最初から事業化の明確なイメージがあったわけではなく、知人のトレーナーを通じて排便記録アプリの製作者と出会ったのがきっかけです。漠然と「これをアスリートで調べたら面白いんじゃないかな?」と感じたんですね。自分がずっと意識してきたことを事業にできるなら、引退後にチャレンジする価値はあるだろうと思えました。
スポーツの世界に限った話ではなく、アスリート自身が社会との接点を持つことで、ゆくゆくは社会に広く貢献できるかもしれない。アスリートがやってきた領域に“何か”をかけ合わせると、新しいイノベーションが生み出せると考えたんです。これから腸内細菌の研究は世界中で進むはずです。ただ、アスリートと腸内細菌の関係性にかぎっては、自分自身がずっと経験してきたことを生かせるという使命感から事業をスタートしています。
*2 腸内フローラ
腸管内に生息する細菌は約100兆個あり、数百種以上に分かれる。それらが種類ごとにまとまり、腸内の壁面に集団を形成している。その様が花畑(フローラ)のように見えることから名づけられた呼び名。腸内細菌叢(そう)の「叢」も「くさむら」の意。
現在、AuBが取り組んでいるのは、腸内細菌解析事業と、それに基づくコンディショニングサポート事業、さらに製品開発業と聞きました。まず、腸内細菌の解析はどのようにスタートさせたのでしょうか。
鈴木 私たちの会社は「アスリート・マイクロバイオーム・バンク」を謳っている通り、各競技のアスリートに協力していただき、便のサンプルを集めることから始めています。これまで27競技で500名以上、サンプル数では1,000検体ほどのデータが集まっていて、その解析から得られた結果を事業化につなげようとしています。
起業する前、素朴な疑問として「どうして最近になって腸内細菌が注目されているのだろう?」と感じていたのですが、2007年ごろに登場した次世代シーケンサー*3 が研究を大きく飛躍させたのだと知りました。そのおかげで、私もビジネスチャンスを感じることができたんですね。
鈴木 そうは言っても、どのように事業を進めていくかは手探りでした。われわれのチームに研究者は入ってくれましたが、事業を組み立てていく、組織をつくっていくといった作業は、今も途上にあります。ただ、強い思いを胸に秘めて「これを変えたいんだ!」と世の中に発信したときに人が集まってくれた。それが私にとって一番の財産です。
研究開発を統括している冨士川さんは、AuBが2年前にクラウドファンディングを仕掛ける少し前に参加されたということです。腸内細菌のどんな面に事業の可能性を感じたのでしょう。
冨士川 やはり、次世代シーケンサーの普及は大きかったです。それまで腸内細菌を観察するには、ほぼ電子顕微鏡で覗くしか方法がありませんでした。まず生きた状態の菌を培養して、十分に殖(ふ)えたものを観察して、どういう菌がいるかがようやく分かる。大腸菌*4 やその他数種類の菌以外、大腸にいるのは空気に触れると死んでしまう嫌気性細菌が大多数ですから、培養も難しかったんですね。
冨士川 現在のDNAシーケンサーが実現したのは、死んでいる菌も含め、すべての菌の「遺伝子」を解析する技術です。遺伝子のデータベースも、公共のものがたくさん揃ってきたので「こういう塩基配列なら、この菌だ」と分かるようになりました。一人の便サンプルを調べると「何百種類という菌のうち、それぞれが何%いる」といったデータまで採れるようになっています。
すると、太っている人と痩せている人では、なるほど腸内環境が違うな、といった発見ができる。太りやすい食事をしていると、腸内細菌も自然に太りやすい菌が増えてくるという論文*5 も、次世代シーケンサーの普及に合わせて注目されました。
私たちがこれまで感覚的には感じていたことに、ちゃんとエビデンス(科学的根拠)が付き始めていると。
鈴木 例えば、2013年の『サイエンス』に掲載された研究結果*6 は、私が腸内細菌とアスリートの関係について考える大きなヒントになりました。遺伝子の条件を同じにするため、双子(一卵性双生児)でありながら、一方が太っていて、もう一方が痩せている人たちから腸内細菌を取り出して無菌状態のラットに移植したんです。
いわゆる「糞便移植(便微生物移植)」の手法ですね。
鈴木 ええ。その後、ラットたちには同じ食事を与え、同じ運動量をこなしてもらい、どのように体型が変化したかを調べました。すると、肥満体質の腸内細菌を移植されたラットは、痩せ型の腸内細菌を持つラットよりも、体脂肪を増やしていったそうです。DNAがほぼ一緒の双子から取り出した腸内細菌によって、こうした結果になった。つまり、肥満は必ずしも遺伝性ではなく、腸内細菌が影響している可能性が高いということです。
冨士川 大腸がんの人と、そうではない人でも腸内環境が違います。先日、慶應大学の医学部が出した論文は、がんの抑制に効果が見られる菌を11種類特定したという発表*7 でした。
*3 次世代シーケンサー(Next Generation Sequencer)
増幅させたDNAから、蛍光標識を光学的に検出する手法(ダイターミネーター法)により、塩基配列を高速に読み出す装置。従来のDNAシーケンサーに比べて、短時間・低コストでのゲノム解析を実現した。2000年代半ばから米国で登場、米イルミナ社が最大手。
*4 大腸菌
棒状をした桿菌(かんきん)。多数の株があり、その中には病原性を持つものもある。「通性嫌気性菌」のため、酸素がない場合は発酵によって、酸素がある場合には好気的呼吸でエネルギーを得られるよう代謝を切り替える。培養しやすく、遺伝子組み替え実験など、各種研究の材料にされる。
*5 肥満に関する論文
An obesity-associated gut microbiome with increased capacity for energy harvest
https://www.nature.com/articles/nature05414
Nature 444, 1027-1031 (2006)
Published: 21 December 2006
*6 双子の腸内細菌に関する論文
Gut Microbiota from Twins Discordant for Obesity Modulate Metabolism in Mice
https://science.sciencemag.org/content/341/6150/1241214
Science 06 Sep 2013:
Vol. 341, Issue 6150, 1241214
DOI: 10.1126/science.1241214
*7 がんの抑制に効果が見られる菌を11種類特定
「健常者から単離 感染抵抗性や抗腫瘍効果を高める腸内細菌株(Nature 2019/1/24 オンライン版に掲載)」
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2019/1/24/28-50832/
なぜ、アスリートの腸内細菌を対象に研究するのか。もちろんアスリート自身のパフォーマンス向上に役立てられると思いますが、彼らと一般人を比較できるメリットもありそうですね。
冨士川 ええ。データは「比べる」ことで価値を持ちます。アスリートと、一般の人。病気の人と、そうじゃない人。そういった特徴的な被験者を見つけられるのが私たちの強みなので、これらのデータを生かした研究をしたいと持ちかけられることが多いです。
鈴木 アスリートは自分自身のパフォーマンスの評価のほかに、競技記録だったり、食事のデータだったり、それからケガの記録といったことがデータとして豊富に記録されています。もちろん、一般の方たちにもデータはそれなりにあるとは思いますが、アスリートの場合、よりスクリーニングされているので価値のあるデータがそろっていると言えるんですね。
冨士川 例えば、私たちは今までJリーガー100人ぐらいのサンプルを見てきました。チーム単位で検査したとき、筋肉に関する菌が少ない人は、実際に筋肉がつきにくい人だったんです。それまで血液や遺伝子をいくら検査しても、筋肉がつきにくい原因が分からなかった。
でも、その人のお腹に特徴的なことがあると分かると「そもそも腸内環境を変えなきゃいけないんじゃないか」とか「だったら食事を改善してみよう」と取り組むきっかけになります。
筋肉がお腹の細菌と関係している。これはケガからのリハビリテーションもそうですし、将来は、宇宙滞在から帰って来たときや、高齢化社会に向けても役立つ知見と言えそうです。
鈴木 実際、マスターズ陸上の選手たちのサンプルもいただきながら研究しています。簡単に言うと、マスターズの選手は「腸内細菌も若い」という研究結果が出ています。
こうした研究は、どこかと一緒にやるのですか?
冨士川 筋肉と腸内細菌の関係、それに高齢者の研究は、いずれも香川大学との共同で進めています。至学館大学には栄養士の先生がいらして、食事などのスポーツ栄養学と腸内環境の関係を一緒に研究しています。
今年からは京都大学農学部の小川 順教授と、鉄分の吸収を良くするような腸内環境を調べています。長距離の選手などはうまく酸素を運搬できるよう、鉄分をすごく気にしているんです。でも、同じ量の鉄分を摂っても血中にどれくらいの濃度の鉄が入っているかは人によって全然違う。それは腸内環境が影響しているんじゃないか、という仮説を立てて研究しています。
冨士川 民間企業の腸管免疫研究所との共同研究もユニークです。スポーツ選手の中には、ケガの治りが異様に早い人がいるんですね。その人たちの腸内環境はどうなっているんだろう、という地点から突き詰めていこうとしています。
このように、AuBの研究テーマは「身体」「心」「寿命(老化)」「ケガ・疲労回復」という4つの大きな課題ごとに取り組んでいます。
現在の腸内環境の研究は、ある仮説の下、ビッグデータの解析に近いことをしながら進んでいるのが印象的です。社内にデータサイエンティストもいるのですか?
冨士川 やはり集めたデータをいかに分析するかが勝負になってきますので、内部にデータを分析する専門職がいます。ディープラーニングを回していくと、例えば、便を調べるだけで「その人がどの競技のアスリートなのか」がおおよそ分かるようになってきたんです。
鈴木 例えば、私がサッカーを今でもやっているなら、便のサンプルから「鈴木さんはサッカー選手だ」と言い当てられる。これが現在、サッカーなどデータ数の多い競技になると約92%の確率で当たる精度になりました。
スゴい。占い師もびっくりですね。
鈴木 サッカーでも、ラグビーでも、陸上でも、人間が腸内細菌の構成を見ただけでは、どの選手のものか分かりません。それが人工知能に機械学習を積ませると、勝手にそう検出してくれるようになったんです。
冨士川 腸内細菌の研究者に言わせると、これは驚異的なことだそうです。まだ理由が特定できていないんですね。反対に菌のメカニズムのほうから追っても、この成果に辿り着けない。ビッグデータの解析をディープラーニングで回していくと、このように特徴的な人たちを分けられたり、その後にメカニズムの発見が続いたりします。
鈴木 今後はアスリートの種別を調べるだけでなく、いろいろな分野で未知だったことが、機械学習によって分かるようになるでしょう。例えば、私たちが将棋の棋士たちのサンプルを調べたときには、明らかに特徴的な菌があったんです。そうやって腸内細菌と連動させていくことで「未病」、つまり病気の予防にも役立てられると考えています。
ちなみに、アスリートの腸内に多い菌というのはどんなものですか?
冨士川 短鎖脂肪酸*8 を生成する菌が多いという実態は、データから見えてきました。一般的に免疫機能を整える役割があると言われているものです。
いわゆる善玉菌、人間にとって有用な働きをする菌たちが活躍しているのですね。
冨士川 特に日本人のアスリートは、昔からの食事が合うのではないかと思っています。それは発酵食品や雑穀などです。例えば、昨年は慶応の陸上部を発酵食品でサポートするプロジェクトを立ち上げました。ハナマルキの「液体塩こうじ」を使ったのですが、塩の代わりに何にでも使えるので食事に取り入れやすく、摂取しやすかったんです。
寮の食事で3カ月ぐらい使ってもらい、その前後の腸内環境を調べました。すると、短鎖脂肪酸が増えていたんです。その結果から、アスリートや一般の人にお勧めできるものだろうという結論になりました。
鈴木 このときは非常に面白い研究結果が出ましたね。日本人の腸内細菌と日本の食文化が密接につながっているのが分かったし、伝統的な食べ物というのは、やはり大事だということを実感できたんです。
鈴木 世間一般で「これがいいですよ、あれがいいですよ」と言われる食品はありますが、万人に当てはまるものはないと思うんです。まずは自分の体調をよく知り、自分に合った食事や補助食品を取っていただくこと。そうして健康のいいサイクルを回してもらうのが、われわれが実現したい未来です。
具体的には、どういうビジネスに取り組むのでしょうか。
鈴木 腸内細菌をスコアのように出して、栄養士や腸内細菌アドバイザーがアドバイスを送るサービスを始めました。食事をすごく気にされている方も多いですけど、実際にその食事が自分の体の中を通って、自分のお腹の状態がどうなっているのかを皆さんに知ってほしいのです。
冨士川 食事改善のきっかけは、現在だと食品メーカー主導になりやすいと思うんですね。私たちは検査してレポートを出すだけではなく、長期間のパッケージで、検査後も継続的な栄養士の食事指導を行い、商品の提供までできるよう開発中です。
開発する商品というのは、サプリや食品ですか。
冨士川 補助食品を考えています。腸内フローラは自分で改善できるものですが、食生活を変えていくモチベーションは必要ですよね。私たちはいろんな腸内環境の違いが分かるようになったので、よりその人に合ったアドバイスをする準備ができました。アスリートにフィードバックしてきたノウハウを組み込み、今度は一般の人に有償サービスとして提供していきます。
*8 短鎖脂肪酸
アルキル基にカルボキシル基が1つ結合した、分子量が小さい(炭素数7以下)脂肪酸。腸内細菌が、食物繊維やオリゴ糖などの難消化性多糖類を発酵させて生み出す。代表的なものは、酪酸、酢酸、プロピオン酸など。
腸内細菌を検査するだけでなく、食事の改善を継続してサポートしたり、補助食品を開発したりするということですが、ターゲットのユーザーはどういった層になるのでしょうか。
冨士川 日本中で一人あたり1回は検査してもらいたいところですが(笑)、特にスポーツをやっているお子さんと、その親御さんに広げたいです。ゆくゆくは、そうした方々と一緒に商品を作れればいいですね。例えば、お子さんが毎日お味噌汁として摂取できる「アスリート味噌」とか、塩こうじみたいな発酵食品とか。
ロングスパンのプロジェクトになりそうですね。
冨士川 同時に、やはり現役のアスリート向けにもサービスや商品を開発したいです。選手自身が本当に必要としているものを突き詰めて考えて、作っていこうと思っています。直近の私たちの夢は、サポートしているアスリート選手たちが2020年に金メダルを獲ることですから。
冨士川 スポーツ界は今、データをすごく大事に分析して、個人に合ったソリューションをいかに提供できるかに力を入れています。食事に関してもそうなので、私たちがサポートをしているわけです。
AuBの研究目的というのは、なにもスポーツ選手になりましょうという話だけではなく、そうやってアスリートが取り組んでいるノウハウや知見を、一般の人にも使えるようにしようというものです。現在はそういう意味ですごく面白い時期にあると思います。
最後に、「自然」と「科学」をテーマにする私たち NATURE & SCIENCE の読者にメッセージをいただけますか?
鈴木 サイエンスの世界と自然というものは、とても離れているようでいて、本当はすごく密接なものだと思います。サイエンスでないと解明できないものは、たしかにあります。でも、例えば「細菌」というものだって目に見えないだけで、土の中にはたくさんいる。それは昔から農業の営みなどで知られていたわけじゃないですか。
今から100年ほど前、私たち人類にとってお腹にいる菌の姿は「発見」でしたが、それまでにも“何か”が働いていることを知っていたのと同じですね。
鈴木 つまり、自然の中にある目に見えなかったものが、サイエンスによって目に見えるものになっただけの話で、本来、人が感じていたものを可視化するという手段だったと思うんです。
私たちの文明は、これまで「より暮らしやすく」と発展してきましたけれども、単に生活しやすいとか、便利だとか、そういうことだけではなく、もう一度「原始的なものを見つめ直す」というところでサイエンスが使われるべきなのかな、という風に思っています。
NATURE & SCIENCE 編集長。コンピュータ誌、文芸誌、デザイン誌、カルチャー誌などを手がけてきた。「現役時代をレッズ一筋に送った、背番号13番。その鈴木さんの転身に驚いた方も多かったのでは。現在は経営者としてひた走る鈴木さんを、冨士川さんが『まさに “水を運ぶ人”(オシム監督が鈴木さんの献身的な活躍を評した表現)です』と信頼するのが印象的です」
amana フォトグラファー。人やもののストーリーを考察し写真を撮る。「身近なことから腸内環境を整えて、
http://amana-photographers.jp/detail/hikaru_otake