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私たちの星への想い⑥

私たちの星への想い⑥

篠原ともえさん、国立天文台に
小久保英一郎教授を訪ねる

構成・文/神吉 弘邦
写真/大竹 ひかる(amanaphotography/parade)

惑星の成り立ちを研究する国立天文台の小久保英一郎教授を、篠原ともえさんが訪問。「4D2Uドームシアター」を鑑賞しながら交わされた対話をお届けします。最終回では、宇宙と海を結ぶ意外な関係性、そして創造性をめぐる二人の考えが明らかに。(全6回)

宇宙はクリエイティブの源

(第5回 太陽系から遠く離れて の続き)

篠原 私たちが星を好きなのは、地球が好き、自然が好きという部分でつながっていくと思うんです。星や自然を見つめると原点に帰れるというか。

小久保 昼間は太陽と大気のために青空があるから宇宙が見えない、蓋をされている感じです。でも、夜になって太陽の光がなくなって、地球が宇宙に向かって開かれる。星空が綺麗だと、改めて「僕らは宇宙にいるんだ」と思いますね。

©️LOOP IMAGES /amanaimages

篠原 先生はご趣味でスキューバダイビングをされると伺いましたが、海と宇宙って、近い感じがあるんじゃないですか?

小久保 僕にとっては海も宇宙も、とても大きくてかなわない相手です。海は宇宙規模から見たら小さいですけれど、ひとりの人間から見たら巨大ですから。

篠原 私もそう思います。

小久保 僕が「惑星がどうやってできるか」というテーマを主に研究しようと思ったのは、やはり惑星は生き物がいる場所だからで、地球がまさにそういう場所です。僕らがなぜ、今この世にいるか。それはハビタブルゾーン*1に地球があったおかげで、海ができたからですよね。海はすべての生き物のふるさとですから、昔から海が好きなんです。

篠原 私もスキューバ、やりますよ。

小久保 南の島で珊瑚礁の海に入ると、魚がすごいじゃないですか。あの「生き物に囲まれている世界」を体験すると、本当に幸せな気分になりますよね。

篠原 まさに「海の中の宇宙」っていう感じです。最近では小笠原諸島に行ってイルカと泳いだんです。船に24時間乗って行くんですけれど、日本にこういう宝物があるというのをすごくありがたいと思います。

小久保 小笠原はいいですよね。父島に国立天文台の望遠鏡があるんですが、行かれましたか?


小笠原諸島 父島 国立天文台 VERA電波望遠鏡
©︎Ushio Hamashita/a.collectionRF /amanaimages

篠原 ええ。行きましたよ、VERA*2。夜にはライトアップもされて綺麗でした。

小久保 石垣島にもVERAがありますよね。学生やポスドクの頃、僕は海に潜りながら島を訪ねまくっていたんです。海や島は今でも大好きで、伊豆七島にもよく行きました。

篠原 私の母は、青ヶ島*3がふるさとなんです。

小久保 えっ、そうなんですか?! まだ行ったことがない島なんですよ。

篠原 火山の島なので、カルデラの中には「ひんぎゃ」(噴気孔を意味する青ヶ島の島言葉)という水蒸気が出ているところがあるんですね。そういう大地を感じる島です。


二重カルデラを持つ青ヶ島。写真は大凸部より望む丸山
©️Jiro Tateno/SEBUN PHOTO /amanaimages


小久保 地球という惑星を考えるうえで、「火と水が出会う場所としての島」はすごく面白い場所です。大学の頃に習った先生に「火山の島は地球の原型だ」と言われました。「水があって、火山があって、どんどん陸ができていく、原初の地球のような環境。地球の成り立ちを考えるのにとても重要だから見て来なさい」と言われ、よく三宅島に行っていたんです。青ヶ島は今でもそうなんですね。

篠原
 そうです。二重カルデラで、火山活動がいったん終息したところに、また火山があるので。その周りは地熱で温かいんですよ。お芋を掘るとき土に手を入れるとホカホカするんです。そのお芋で作る「青酎」という焼酎を私のおばあちゃんが作っていました。

小久保 それは今度ぜひ飲みたいです。僕、芋焼酎が大好きなんです(笑)

篠原 最近では許可が下りて、度数60度の青酎も発売されました。お芋のマークがあるのがうちの家系の焼酎で……もう、島と宇宙の話をしたら止まりませんね(笑)


*1 ハビタブルゾーン

中心星からの放射エネルギーが、生命が誕生するのに適した条件と考えられている天文学上の領域。太陽系では、金星は太陽からの放射が強すぎ、火星は弱すぎると推定される。

*2 VERA(ベラ)

銀河系の3次元立体地図を作るプロジェクト。VERAの観測局は、水沢(岩手)、小笠原(東京)、入来(鹿児島)、石垣島(沖縄)。この4つの観測局を組み合わせて観測すると、直径2,300kmの望遠鏡と同じ性能を発揮する。国立天文台を中心に多くの大学や研究所から研究者が参加して、2003年から観測が始まった。

*3 青ヶ島

東京から358km南に位置する伊豆七島の離島で、世界的にも珍しい二重カルデラがある。青ヶ島村は日本一人口が少ない自治体(2010年の人口は165人)。ヘリは1日1便、断崖絶壁に囲まれているため少しの高波でも船が着岸できなくなり、就航率は6割を切ると言われる。


自分が楽しめるものを作りたい

篠原 最後に、これから4D2Uをどう広げていきたいと考えられているか伺いたいです。

小久保 今は自分の研究を進めて、地球がどうやって生まれたのか、初めから通して作ってみたいと思っています。いろいろなことが分かってきているので、ここではいつでも最新の宇宙の姿を見られるようにしたいです。最初にあったのは「僕が研究したことを目の当たりにしたい」という想いでした。それは続けていきたいと思います。

篠原 やっぱり天職なんですね!


国立天文台 三鷹キャンパス 天文台歴史館(大赤道儀室)にある「65cm屈折望遠鏡」は1929年完成。焦点距離10m、日本最大の口径を誇る望遠鏡として、さまざまな観測に用いられた。木製のドームも造船技師の技が使われている貴重な建築

小久保 そうだと思います。自分で見て、素直に喜べるものを作りたいですからね。人のためだと思ってやると、妥協が入ったりしてあまり良くないのかもしれません。自分が楽しめないといいものはできないと思います。

篠原 本当にそう思います。私も自分でデザインの仕事をするとき、自分が着たい服とか、自分が着てワクワクするファッションというものを心掛けているんです。今日新しく見た4D2Uの映像は、もちろん楽しいし、素晴らしかったのですが、デザインのインスピレーションになるので、「またここへ感じに来たい!」と思うんですね。

小久保 CGを作ってくれる皆も、それぞれ自分のこだわりがあってしっかりと作ってくれていますから、今の篠原さんの言葉を聞いたら嬉しいでしょうね。宇宙では、僕らが到底かなわないスケールで何かが起きています。研究者たちはそれがなぜだか知りたい。そして分かったことを目の当たりにしたい、というのが4D2Uを続ける理由です。

篠原 素敵です!

小久保 僕は仲間にも恵まれているんです。4D2Uが絶えず進化し続けられるのは、そういう仲間が支えてくれているから。「もっとこういう風に見たいんだけど」と言うと応えてくれるのは、本当にありがたいです。

篠原 今日は作り手側の原点を感じるような、とってもクリエイティブなお話をありがとうございました。「宇宙と創造性」というテーマで一緒にお話ができたのも、すごく嬉しかったです!

(終わり)


「STaR☆PaRTY 星と宇宙のデザイン展 TeNQ」

篠原ともえさんによる初の宇宙をテーマにした特別展が、東京ドームシティで開催中です。本展のためにデザイン・制作したオリジナルドレスを始め、原画や星空写真など、これまでの作品約50点を展示。篠原さんデザインのアクセサリーやステーショナリーなども販売されます。

期間:2018年11月8日(木)~2019年3月3日(日)11:00~21:00(土日祝は10:00~21:00、最終入館は20:00まで)
会場:宇宙ミュージアム「TeNQ(テンキュー)」

住所:東京都文京区後楽1-3-61 黄色いビル6F(JR・東京メトロ・都営地下鉄「水道橋」駅すぐ)
https://www.tokyo-dome.co.jp/tenq/event/exhibition-15.html
 
期間中、星や宇宙に関係するアイテムを身につけてくると当日入館券が200円引きになる「ドレスコード割引」を実施中です!(
TeNQチケットカウンターで当日券購入時のみ、他の割引サービスとの併用不可)

Profile
Writer
神吉 弘邦 Hirokuni Kanki

NATURE & SCIENCE 編集長。コンピュータ誌、文芸誌、デザイン誌、カルチャー誌などを手がけてきた。「少年時代を過ごした北海道の情景、20代に日本の離島を旅して得た感覚。そんな素朴な経験をこのサイトに盛り込みたいです」

Photographer
大竹 ひかる Hikaru Otake

amanaphotography/paradeフォトグラファー。人やもののストーリーを考察し写真を撮る。
http://amana-photographers.jp/detail/hikaru_otake

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