アリが道に迷わない
2つの能力とは?
『プチペディア』で迫る、
昆虫・植物・動物のヒミツ
©︎GUSTO/SCIENCE PHOTO LIBRARY /amanaimages
『プチペディア』で迫る、
昆虫・植物・動物のヒミツ
身近な公園や家のまわりでも、アリの行列を見かけることがあります。いったいどこからやってきたのか、と思ったことはないでしょうか? その秘密には、アリの2つの能力が関わっているようです。NATURE & SCIENCEが手がける『PETiT PEDiA せかいの昆虫』(アマナイメージズ)の掲載記事から再構成してお届けします。
アリの行動半径は約100mと言われます。これは人間の大きさに換算すると数十kmにもなりますが、どうやって巣まで戻っているのでしょうか。
アリは昆虫の中でも視力が良いほうで、歩きながら周りを見て景色を覚えるようです。また、アリの複眼は特殊な光を見ることができるため、雲に隠れていても太陽のある方角がわかります。
さらに巣からどれくらい移動したか記憶するアリもいるらしく、こうした情報を総合して巣まで戻ってくるようです。
また、アリの中でも小型のものは、多数が集まって大きな獲物を運ぶことがあります。そんなとき、仲間を集めるために役立つのが「道しるべフェロモン」です。
視覚によって太陽光線をもとに判断しているとはいえ、アリは基本的には暗い巣の中を主な活動場所としており、野外で活動するものは実はごく一部です。
そこで、アリたちが活用するもう一つの能力が、化学物質によるコミュニケーションというわけです。
道しるべフェロモンは腹部から分泌する匂い物質で、これを出しながら巣に戻ることにより、仲間は獲物の場所を知ることができるのです。
道しるべフェロモンは揮発性が高く、だいたい1分半ほどで消えてしまいますが、これをたどる仲間たちがそれぞれフェロモンを出すため、次第に濃度は高まり、獲物までの道が大混雑することもあります。
アリたちは、触角でフェロモンを探知しています。片方の触角を切り落としたり、左右の触角が交差するように結んで行われた実験では、匂いの道を効率よくたどれなくなったという実験結果もあります。
ほかにも、敵や味方の識別に化学物質が働いており、触覚で同じ巣の仲間であるかどうかを判断しているようです。
このように、アリは視覚や化学物質による総合的なコミュニケーションを使って巣に戻ってくるのですね。
これからの暖かい時期、家のまわりでアリの行列を見かけたら、こうした能力に注目しながら観察してみると面白いかもしれませんよ。
この記事の元になった本は……
プチペディアブック「にほんの昆虫」(アマナイメージズ)
昆虫の成長ステージである卵、幼虫、さなぎ、成虫の4つの章に分けて、さまざまな疑問に回答しています。取り上げた疑問は単なる雑学的なものではなく、昆虫の全体像を知るための近道となるものです。ぜひ、お子さんと一緒にコミュニケーションしながら読んでみてください。好奇心を育み、昆虫に興味を持つきっかけとなるはずです。
[企画・編集]ネイチャー&サイエンス
[監修]岡島秀治(東京農業大学教授)[文]丸山貴史(アードバーグ)
[判型]B6変
[ページ数]152ページ
本体価格 ¥1,400(+税)
編集者。1989年生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。出版社で書籍編集担当、カメラマンとして勤務した後、フリーランスに。図鑑や実用書、Web媒体などの編集・撮影を行う。実家は鰻屋さん。「アリの社会システムはとても面白いですよね。巣の中でアリと共存する好蟻性昆虫との関係性にも興味があります」