日本古来のお月見
「十三夜」
十五夜だけじゃない、
もう一つの月
十五夜だけじゃない、
もう一つの月
9月の十五夜(中秋の名月)を観賞することはできたでしょうか。見逃してしまったという人でも、じつは日本には十五夜以外にもお月見があるのです。
十五夜の後には、「十三夜(じゅうさんや)」という日本古来のお月見の日があります。しかも、十五夜を見たなら、その後の十三夜の月も見たほうがよいといわれています。
十三夜とは、旧暦(太陰暦)で毎月 13 日の夜のこと。特に 9 月 13 日の夜を指します。十三夜の月は、十五夜の約1ヶ月後であることから「後の月」ともよばれます。新暦では、十五夜と同様に十三夜も毎年ちがう日になります。
2020年までの十三夜
2018年:10月21日
2019年:10月11日
2020年:10月29日
十五夜は新月から数えて15日目で満月、もしくは満月に近い月。同様に十三夜は新月から数えて13日目で、満月には少し欠ける月です。
十五夜は、もともと平安時代に中国から伝わってきました。一方、十三夜は日本オリジナルの風習だそうです。
醍醐天皇(平安時代 885〜930 年)が月見をしたのが始まりとも、宇多天皇(平安時代 867 〜931 年)が十三夜の月を愛でたのが始まりともいわれています。
十五夜と対をなすのが十三夜。この2つを合わせて「二夜の月」とよびます。十五夜は収穫した芋を供えることから「芋名月」ともいい、十三夜は栗や豆の収穫の時期なので「栗名月」「豆名月」ともいいます。
どちらか一方の月しか見ないことを「片見月」といいます。「十五夜の月を見たら、十三夜の月も見ないと縁起がよくない」ともいい、昔は十五夜と十三夜を同じ庭で見る風習があったようです。
ちなみに、十五夜の頃(新暦9月あたり)は台風や秋雨の時期で天気がよくなく、「中秋の名月、十年に九年は見えず」という言葉があります。一方、十三夜の頃(新暦で10月あたり)になると、秋晴れが多く美しい月が見られることから「十三夜に曇りなし」といわれます。
十五夜と同じように、栗や大豆、果物など秋の実りとともに月見団子をお供えします。団子の数は12ないし13がよいとされます。
ススキやナデシコなど、秋の草花もあれば飾るとよいですね。収穫の喜びと感謝を込めて、月を見上げて楽しみましょう。
月を見ると、空想的になったり感傷的になったり、なぜだか気持ちがかき立てられます。お月見の夜に、心を豊かにするあそびはいかがでしょうか。
<月の模様であそぶ>
日本では月の模様を「餅をつくウサギ」に見立てますが、国によっていろいろな見方があ ります。たとえば・・・
本を読むおばあさん(北ヨーロッパ)
カニ(南ヨーロッパ)
吠えているライオン(アラビア)
ワニ(インド)
ロバ(南アメリカ)
みなさんは、月の模様が何に見えますか? 想像をふくらませて、見立ててみましょう。
<歌を考える>
日本人は昔から夜空の星月に魅かれ、その思いをたくさんの和歌や俳句として残してきま した。夜空を見上げて感じたことを、思うままに詠むのも素敵ですね。
煌々と輝く満月は文句なしの美しさですが、ほんのり欠ける十三夜の月もまた趣があります。秋の静かな夜に、十三夜のお月見を楽しみましょう。
おもな参考・引用文献
『新日本大歳時記』(講談社)
『日本大百科全書』(小学館)
『月と暮らす。』(藤井旭著/誠文堂新光社)
『月に恋』(ネイチャー・プロ編集室編/PHP)
『暦の科学』(片山真人著/ベレ出版)
「JAXA宇宙教育センター」http://edu.jaxa.jp/
NATURE & SCIENCE 副編集長。子ども向け書籍の編集を多く手がける。児童書、絵本、かわいい生きものなどが得意。特に好きなのはモウコノウマ、おすすめのかわいい生きものはケープハイラックス、ハネジネズミ、クワッカワラビーなど。