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Nature & Science

アマナとひらく「自然・科学」のトビラ
Series 連載
私たちの星への想い⑤
私たちの星への想い⑤

篠原ともえさん、国立天文台に
小久保英一郎教授を訪ねる

構成・文/神吉 弘邦
写真/大竹 ひかる(amanaphotography/parade)

惑星の成り立ちを研究する国立天文台の小久保英一郎教授を、篠原ともえさんが訪問。「4D2Uドームシアター」を鑑賞しながら交わされた対話をお届けします。第5回は、最新のシミュレーションが描き出す銀河系の姿に加え、「宇宙の広さに限りはあるの?」という疑問に迫ります。(全6回)

太陽系から遠く離れて

(第4回 どうやって惑星は生まれるか の続き)

小久保 私たちがいる銀河系の形を知りたいというのは、天文学の大きなテーマの一つです。今、世界中の研究者が地球から星までの距離を測って「星の地図」を作っています。まだ4D2Uの中には完全には反映されていないのですが、太陽の周りの星の位置を正確に測るプロジェクトが、ヨーロッパを中心にずっと行われているんです。

篠原 どんどん星の地図に描き足されていくんですね。

小久保 暗い星までさらに正確に描き出そうという試みが、星の地図作りで進んでいるんですね。その最新版のデータを僕らも使おうと考えています。今の段階で分かる観測やシミュレーションの結果をいろいろ使って全体像を描き出すと、このようになります。

©馬場淳一(シミュレーション), 中山弘敬(可視化), 国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト

篠原 わぁ、天の川!

小久保 私たちのいる銀河系は天の川銀河とも呼ばれています。真ん中が丸くなくて伸びていて棒状なので「棒渦巻銀河」という種類の銀河です。周縁へ向かう渦巻き模様があって、僕らがいるのがこの辺りですね。

篠原 銀河の中では、ほんのひとかけら。

小久保 「オリオン腕」*1という名前の付いているところです。真ん中から見ればずいぶん外れたところにいます。銀河系はおよそ直径10万光年で、僕らがいるところは真ん中から3万光年くらいのところになります。

©馬場淳一(シミュレーション), 中山弘敬(可視化), 国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト

篠原 想像もつかないような距離です。

小久保 これが最先端のシミュレーション結果から僕らが作った天の川銀河の映像です。

天の川銀河紀行
©馬場淳一(シミュレーション), 中山弘敬(可視化), 国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト

篠原 星が降ってくる! 雪みたいに。

小久保 本当に雪みたいですよね。黒いところは、星の素になるガスの暗黒星雲ですね。赤っぽいところは、近くに明るい大きい星があって、それに照らされて光っているガスです。

©馬場淳一(シミュレーション), 中山弘敬(可視化), 国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト

篠原 「M42」*2のように赤いですよね。

小久保 そうです。まさにそういうガスです。ちゃんと動いていますよね。シミュレーションの素晴らしいところは、こういう銀河の運動を描くことができることです。

篠原 うわぁ、本当に生きていますね、銀河が!

©馬場淳一(シミュレーション), 中山弘敬(可視化), 国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト

小久保 ええ、生きています。1個1個はバラバラに動いていますが、全体として、ああいう形になっている。その中には、生まれたての若い星の集団があったりします。

篠原 本当に自由で、桜吹雪みたい。

小久保 スーパーコンピュータでは1千億個の粒子を使ってシミュレーションできる段階まで来ました。最先端のシミュレーションだと、銀河系の中にある1個1個の星をコンピュータで扱えます。

篠原 こういうシミュレーションができると、いろいろな研究にも役立つということですね。

小久保 はい。望遠鏡とは違う見方ができるので、理解がずいぶん進みます。観測で見られるものは一瞬、瞬間の姿です。シミュレーションできると時間軸の方向も分かるので、運動の様子が分かったり、形成過程が分かったりします。

*1 オリオン腕(Orion Arm)

読みは「おりおんうで、おりおんわん」。棒渦巻銀河である銀河系において、太陽系が属する腕(スパイラル・アーム)のこと。

*2 M42(NGC1976)

オリオン座の三つ星付近に広がる、天の川銀河の中にある散光星雲(オリオン大星雲)。地球との距離は約1,500光年で、直径30光年ほど。

無限に広がっている宇宙

小久保 最後に一番大きな構造、宇宙の大規模構造と呼ばれているものをお見せします。銀河が集まっている部分を銀河団、銀河団の集まりを超銀河団と呼びます。

篠原 網目状になっていますね。

小久保 ええ、超銀河団の連なりが編み目の紐のようになっていて、こういう構造を作り出しているんですね。白く色分けしているのが普通の銀河、青っぽい銀河が「クエーサー」*3と呼ばれるものです。

宇宙の大規模構造
©︎加藤恒彦(プログラム), ARC and SDSS(宇宙の大規模構造データ), 国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト

篠原 リボンみたいな形になっているのは、「今、私たちがデータを収集しているのはここまでです」ということですよね?

小久保 そうですね。

篠原 私たちが子どもの頃は「宇宙はこうです」って提示されて、何十年も経ったら「違いました」というものがいっぱいあったじゃないですか。4D2Uではわかっていないことは白紙で「出しません」とする潔さを感じます。これから真実を学べるところ、想像の余地を与えてくれるところが私はとても好きなんです。

小久保 種明かしをしてしまうと、何もない真っ暗になっている方向は我々のいる銀河系の渦巻き、円盤がある方向なんです。僕らは円盤の中にいるので、円盤の中の塵(ちり)や暗黒星雲があると見にくいのですが、上下方向は見やすい。ですから、そちらの方向を中心に観測しているのでリボンの形になっているんです。

篠原 そういうことだったんですね!

小久保 今、一番遠くで見えている銀河が約134億光年。138億光年というのが宇宙の地平線と呼ばれているところで、これよりも外側は現実的に見ることができません。なぜかと言うと、僕らが「見る」ことができるのは「望遠鏡に光が届く」ということだからです。

篠原 
宇宙は今、138億歳。

小久保 138億年の間に光が飛んで来られるところからしか光が届かないので、私たちが見ることができる宇宙には限りがあります。でも、実際の宇宙はこれより全然大きくて、直接確かめることはできないですが、今は「無限に広がっている」と考えられています。

篠原 無限って、あるんですね。

小久保 無限を感得する(実感する)というのは難しいです。無限に広がっているという予測と、観測結果が矛盾していないので、そうではないかと考えられています。

小久保 もし「宇宙に端がある」とすると、どこも同じではなくなりますよね。大元になるのは「どの場所であっても宇宙の中心たりうる」という考え方です。

篠原 なるほど。地球だと空間の限界があるから、いろいろなものが変わったりしますよね。

小久保 狭い範囲で見れば場所によって違ったりしますけれど、大きな目で見るとどこも同じです。たとえ他の銀河に行って同じように観測しても、同じような構造が見られるはずなので「宇宙にはどこにも特別な場所はない」と考えられているのです。

>>最終回 宇宙はクリエイティブの源 へ続く

*3 クエーサー

太陽1,000億個分の明るさを持つ準恒星状天体。100億光年以上の非常に離れた距離にあるが、極めて明るく輝いているため恒星のような点光源に見える。

天の川銀河紀行(BGM付、3D VR版)
PCのWebブラウザーで視聴する場合はマウスカーソルで自由な視点の移動が可能、スマートフォンの場合はYouTubeアプリの利用で端末を好きな方向に向けてVR映像が楽しめる。また「アナグリフ」への切り替えで、赤青メガネ用の立体映像も表示できる(ご利用環境によっては、非対応の場合があることをご了承ください)
©馬場淳一(シミュレーション), 中山弘敬(可視化、音楽), 国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト

「STaR☆PaRTY 星と宇宙のデザイン展 TeNQ」

篠原ともえさんによる初の宇宙をテーマにした特別展が、東京ドームシティで開催中です。本展のためにデザイン・制作したオリジナルドレスを始め、原画や星空写真など、これまでの作品約50点を展示。篠原さんデザインのアクセサリーやステーショナリーなども販売されます。

期間:2018年11月8日(木)~2019年3月3日(日)11:00~21:00(土日祝は10:00~21:00、最終入館は20:00まで)
会場:宇宙ミュージアム「TeNQ(テンキュー)」

住所:東京都文京区後楽1-3-61 黄色いビル6F(JR・東京メトロ・都営地下鉄「水道橋」駅すぐ)
https://www.tokyo-dome.co.jp/tenq/event/exhibition-15.html
 
期間中、星や宇宙に関係するアイテムを身につけてくると当日入館券が200円引きになる「ドレスコード割引」を実施中です!(
TeNQチケットカウンターで当日券購入時のみ、他の割引サービスとの併用不可)

Profile
Writer
神吉 弘邦 Hirokuni Kanki

NATURE & SCIENCE 編集長。コンピュータ誌、文芸誌、デザイン誌、カルチャー誌などを手がけてきた。「少年時代を過ごした北海道の情景、20代に日本の離島を旅して得た感覚。そんな素朴な経験をこのサイトに盛り込みたいです」

Photographer
大竹 ひかる Hikaru Otake

amanaphotography/paradeフォトグラファー。人やもののストーリーを考察し写真を撮る。
http://amana-photographers.jp/detail/hikaru_otake

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