a
アマナとひらく「自然・科学」のトビラ
Series

連載

花と自然の鎌倉さんぽ「9月 長月」

田んぼと湿地の花畑が
いざなう、秋の里山

花と自然の鎌倉さんぽ
「9月・長月」編

写真・文/村田 江里子

涼しい秋風が吹き始めるころ……たわわに稲が実り、実りの季節を迎える田んぼや里山は、日本人の原風景とも言える昔懐かしい景色に出会えるところ。そんな風景が、鎌倉にも残っているのをご存知ですか? 鎌倉フラワー&ネイチャーガイドの村田江里子さんがご案内します。

※お出かけを計画される際には、新型コロナウイルスの感染拡大の防止に十分注意をするようにしてください。(編集部)

キチキチキチ……モズの高鳴きが響く実りの秋。鎌倉に今なお田んぼや畑が広がる里山の風景、ここが鎌倉中央公園です。

のびやかに田んぼが広がる「山崎の谷戸(やと)」(鎌倉中央公園内)

のびやかに田んぼが広がる「山崎の谷戸(やと)」(鎌倉中央公園内)

鎌倉中央公園は、鎌倉と北鎌倉と大船の中間あたり、文字通り鎌倉市の中央付近に位置し、谷戸(やと)の自然環境が一体的に保全されて昔ながらの里山・谷戸環境が残る、約23.7 haの公園です。丘陵に、ひだのように刻まれた谷間一帯の空間を、「谷戸」といいます。三方を山に囲まれた鎌倉では、谷戸は典型的な地形です。

園内には生態系保護区、里山保全活動区が設けられ、「良好な谷戸生態系が残されており、里地里山に特徴的な種をはじめ、多様な動植物の生息空間として需要である」とのことから、全国に500カ所ある環境省の「生物多様性保全上重要な里地里山」に選定されています。その豊かな里山の環境を見ていきましょう。


稲穂がたわわに実る秋の谷戸田

鎌倉駅からバスに乗って鎌倉中央公園バス停へ。そこから管理棟へ続く道を下っていくと、上池・下池と呼ばれる池があります。ここは、昔の田んぼのため池跡。かつては、あたり一帯に田んぼが広がり、特に池の周辺は、皇室に献上されるお米がつくられたこともある田んぼだったといいます。

上池。昔の田んぼのため池跡

上池。昔の田んぼのため池跡

9月から10月ごろ、2つの池の間にある階段を下っていくと……湿生花園に咲く、赤いツリフネソウやオオミゾソバの花々。秋の湿地のお花畑です。

ツリフネソウはその名のとおり、花の形が吊るされた帆掛け船のよう。3 cmほどの、鮮やかな紅色の花です。

ツリフネソウの花。吊るされた帆掛け船のような形

ツリフネソウの花。吊るされた帆掛け船のような形

オオミゾソバは、形も大きさもコンペイトウのような、濃いピンクの花。どちらも、湿地で見られる植物たちです。

秋の湿地に咲くオオミゾソバ。鎌倉では、この鎌倉中央公園で特に多く見られる

秋の湿地に咲くオオミゾソバ。鎌倉では、この鎌倉中央公園で特に多く見られる


貴重な湿地の環境と生きものたち

こうした谷戸底の湿地環境や、そこにすむ動植物が、貴重になってきていることをご存じでしょうか?

丘陵に降った雨は土にしみこみ、やがて谷あいからしみ出す「しぼり水」となり、谷戸底(谷戸の谷あいの低地部分)にたまります。そのため、谷戸底では昔から、池や小川や湿地などの水辺がつくられてきました。そこにはホタルやカエルなど、水辺の生きものが適応してきました。

鎌倉中央公園の「下池」。カメがのんびり甲羅干ししていることも

鎌倉中央公園の「下池」。カメがのんびり甲羅干ししていることも

しかし、昭和30年代ごろ、鎌倉にも宅地開発ブームが押し寄せます。開発しやすい谷戸底の平らなところから埋め立てられて宅地化が進み、ちょうどそこにあった水辺環境も、失われていきました。

水辺にいた生きものたちはすみかを追われ、今や貴重なものになってしまっています。そうした中、この鎌倉中央公園では、谷戸底の水辺も含め、一体的に谷戸の環境が保全されていて、今も水辺の生きものたちと出会うことができます。

鎌倉市内で脈々と、命とその遺伝子を受け継いできた「鎌倉メダカ」は、生息環境の田んぼや小川などの水辺が減少したことにより、野生状態では絶滅してしまっていますが、市内の民家で飼われていたものがのちに見つかり、ここの水辺でも保護増殖が図られています。

ときにコバルトブルーのカワセミが水辺をスーッと飛んだり、コサギが魚を狙ってたたずんだりしていることも。

青い鳥、カワセミ。チーッと高く澄んだ声で鳴きながら池のそばを飛び、魚を捉えて食べる姿が見られることも

青い鳥、カワセミ。チーッと高く澄んだ声で鳴きながら池のそばを飛び、魚を捉えて食べる姿が見られることも

カメが水辺で、のんびり甲羅干ししていることも。外来種のミシシッピアカミミガメばかりでなく、園内に残された昔ながらの田んぼでは、在来種のクサガメも生息しています。


綿菓子と間違える甘い木の香り

そんな水辺や湿地に咲き誇るツリフネソウやオオミゾソバを愛でながら道を下って……山崎口に降りる手前で、もしかすると、秋には黄色く色づいた木々のあたりから、甘く香ばしい、綿あめやべっこう飴のような香りが漂ってくるかもしれません。

これは、植えられたカツラの木の葉の香り。鎌倉彫の材料となる材が採れる木です。以前、この香りをかいで、中央公園の管理事務所に、「今日は綿菓子屋さんがあるんですか?」と質問に来た親子さんもいたそうですよ。

鎌倉彫の原料となる材が採れるカツラの木。秋に色づいた葉から、甘く香ばしい香りが漂う。鎌倉には自生はしておらず、鎌倉ゆかりの木として植えられている

鎌倉彫の原料となる材が採れるカツラの木。秋に色づいた葉から、甘く香ばしい香りが漂う。鎌倉には自生はしておらず、鎌倉ゆかりの木として植えられている

かつては北海道産などのカツラがよく鎌倉彫に使われていたといいますが、現在は、材に適した太いカツラが減少し、中国産のものが多く使われているといいます。


公園山崎口の門の近くには、獅子舞の姿に似た大きな岩「ししいし」がたたずんでいます。

左手下に見えるのが「ししいし」。獅子舞の姿に似た大きな岩

左手下に見えるのが「ししいし」。獅子舞の姿に似た大きな岩

ここは子どもたちの格好の遊び場。ししいしに登って「ヤッホー!」と叫んだり、岩の下を流れる小川でチャプチャプ水遊びしたり。カワトンボのヤゴやマシジミの貝殻、ホタルの幼虫がえさとしているカワニナという巻貝も見つかります。


人間の「根っこ」を里山ではぐくむ

この鎌倉中央公園付近は、自然の中で未就園・未就学児を育てたい、という皆さんが集う、青空自主保育も盛んなところ。私自身も、今は小学生の子どもが幼いころはお世話になり、日々泥んこになって、一緒にお山や川で遊んだものです。

「お母さんにお土産!」と、ポケットいっぱいにドングリを詰めて歩いたり、「お尻滑り」で土の斜面を滑り降りたり、なかなか高みに登れない子に、みんなで手を差し伸べて段差を引っ張り上げたり……大地を駆け、お花の甘い蜜を吸い、ときに泣くことがあっても、自分の道を自分で見つけながら、子どもたちはたくましく成長していきました。

息子は今も、木登りや自然の中での遊びが大好き。人間の生きる根っことなる原風景を自然の中で胸に刻み、たくましく生き抜く力は、確実に身についたなと思います。

ししいしに乗って遊ぶ子どもたち。この岩は公園ができる前、あたりに田んぼが一面に広がっていたころから、この地を見守り続けてきた

ししいしに乗って遊ぶ子どもたち。この岩は公園ができる前、あたりに田んぼが一面に広がっていたころから、この地を見守り続けてきた

私自身も、子どものとき、学校の先生に自然の中に連れていってもらい、楽しい思い出をたくさんいただきました。その自然に恩返しをしたい、と生まれた気持ちが、鎌倉ネイチャーガイドとしての今の私をかたちづくる原点。大きくなって、都会でつらいことがあったときも……まちの緑を見るとふっと心がやすらぐ、そんな生涯を通じた「自然」という友達を、幼少期の原体験を通じて得ることができたのは、人生の大きな糧となったと感じます。

「わあ、きれい!」ときれいな実を見つけたとき、「あ、バッタ!」と目を丸くしたときのキラキラ輝く瞳……自然とともにあるとき、人は一番ナチュラルな表情で、ワクワク輝く瞳が自然に生まれてくるような気がします。人は自然に生かされている生きものの一員だから、自然とともにあることを、心と身体が求めているのではないでしょうか。

稲穂をかけて干す「はさがけ」風景。毎日食べるお米がこうして稲の命をいただいてつくられていることを、あらためて実感できる光景

稲穂をかけて干す「はさがけ」風景。毎日食べるお米がこうして稲の命をいただいてつくられていることを、あらためて実感できる光景


日本自然保護協会の「すべてのこどもに自然を!プロジェクト(仮称)」の記事には、「幼少期の自然体験の豊かさが自然保護の実現に直結します」との一文も見られます。

日本の原風景でもある里地里山の風景に、人間の「根っこ」をかたちづくる幼少期に原体験として楽しく出会わせてあげる……そんな体験から、また、地域の自然を「好き」「大切」と思う気持ちが生まれ、地域の自然生態系を守り育てる人材や、持続可能な地球を支えたいと心の真ん中から思える将来世代の子どもたちも、自ずと生まれてくるのではないでしょうか。

田んぼを見つめる子どもたちの瞳に、どんな原風景が刻まれていくことでしょう

田んぼを見つめる子どもたちの瞳に、どんな原風景が刻まれていくことでしょう

今や貴重となっている里地里山の自然生態系や生きものたちを守る心をはぐくむためには、まずその楽しさ・素晴らしさを知ること、味わうことから。人が少ないオープンエアの野外で「密」を避けながら……子どもはもちろん、大人の私たちも楽しみながら地域の自然とふれあい、すこやかさや安らぎ、心のよりどころをいただくことはできるはず。

そうした体験を通じて、かけがえのない宝物をくれた母なる自然に、何か自分もお返ししたい。また、そう思う仲間も増えていったら……と願わずにいられません。


「湿地には立ち入らない」というマナー

ししいしを過ぎて奥に進むと……再びあたり一面、紅色のオオミゾソバやツリフネソウのお花畑。「わあ……!」思わず息をのむ光景です。

ツリフネソウやオオミゾソバが咲き乱れる、秋の湿地のお花畑

ツリフネソウやオオミゾソバが咲き乱れる、秋の湿地のお花畑

湿地環境が残されているからこそ出会える、素朴な自然の花園。当たり前のようにそこにあるように見えますが、湿地は、大勢の人が足を踏み入れると土が踏み固められて水がしみ込みにくくなり、乾燥化が進んでしまいやすい環境でもあります。

谷戸の自然と人とが長く共生してきたこの地で、「湿地には立ち入らない」などのマナーやルール、自然と人の付き合い方が大切にはぐくまれてきたからこそ、今も秋の花たちが咲き誇る、湿地環境が守られてきたのでしょうね。


しばらく行くと、広々とした原っぱが広がる野外生活体験広場へ。山際の小川の流れに沿って、ベルト状に草が茂るゾーンがあります。ここは野生の生きもののために、あえて草を刈り残している場所。大人の足首から膝くらいの高さの草地を保全することで、警戒心の強い生きものたちの隠れ場所となったり、草の実を小鳥たちが食べたり……と、草地やその奥の水辺を利用する野生動植物の、大切な生息環境となっています。

小川に沿って草が残されたゾーン。草地を利用する野生の生きものたち、警戒心の強い小鳥などにも配慮した保全・管理が行われている

小川に沿って草が残されたゾーン。草地を利用する野生の生きものたち、警戒心の強い小鳥などにも配慮した保全・管理が行われている

こうして、野生生物の立場にたった保全活動をし、生物のモニタリング調査をして生物の生息状況を確認しては、よりよい保全のあり方へ軌道修正していく……そんなPDCA*1 の循環を回していくきめ細かい保全活動が、自然の専門的な知識をもつ地域のボランティアの方々との協働で展開されています。

当たり前にあった環境、そしてそこにすむ生きものたちも、貴重になってきている今……昔ながらの環境を、生きものの立場に立ったあたたかな目で守り育てようという地域の方々の想いとご努力が、こうしてかけがえのない里地里山の自然・生きものたちを次世代へと伝える力となっているのですね。

「SDGs*2 未来都市」にも選定されている鎌倉。地球の生物多様性を支える地域の自然生態系保護の視点は、こうした昔ながらの環境や生き物を大切にする人々の想いと行動からも、はぐくまれていきます。

*1 PDCAサイクル

Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)を繰り返すことによって、管理業務を継続的に改善していく手法のこと。

*2 SDGs(持続可能な開発目標)

2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標のこと。17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っている。


昔懐かしい田んぼや畑の風景

野外生活体験広場を抜けて進むと、一面に、田んぼが広がっています。秋なら、金の稲穂がたわわに実って……深呼吸したくなる、のびやかな秋の里山の景色。

昔ながらの方法で耕作される谷戸田。奥に「はさがけ」された稲穂の列が見える

昔ながらの方法で耕作される谷戸田。奥に「はさがけ」された稲穂の列が見える

NPO法人山崎・谷戸の会のボランティアの皆さんが、貴重な谷戸景観と生態系を守ろうと、谷戸田を耕作し、里山の自然環境を守り育てていらっしゃいます。市と協働し活動され、地元山崎の農文化を引き継いだ昔ながらの作業が行われています。

定期的に草刈りがされる秋の道端の斜面を、昔ながらの里山の環境に適応したヤマハッカやツリガネニンジン、ワレモコウなどの野の花が、可憐に彩ります。

適切な時期に草刈されることで咲く、秋の斜面を彩るワレモコウ

適切な時期に草刈されることで咲く、秋の斜面を彩るワレモコウ

かつて鎌倉では、谷戸あいの平らなところのあちこちに、こうした田んぼが広がっていたのだそう。美しい昔ながらの風景と生きものたちを守り継ぐボランティアの皆さんの想いとご努力に、頭が下がります。

定期的に草刈りされる斜面に可憐に咲くツリガネニンジン

定期的に草刈りされる斜面に可憐に咲くツリガネニンジン

2019年9月に起きた、2度にわたる大きな台風では、各地で大きな被害がありました。この鎌倉中央公園の散策路も、倒木や土砂崩れで、一時通行止めとなりましたが、指定管理者である(公財)鎌倉市公園協会やボランティアの皆さんのご尽力により、現在は復旧されています。多くの方の想いとご努力により、生きものたちの命あふれるかけがえのない自然が守り育てられていること、皆さまに心より敬意を表し、感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。

ヨメナ。秋、農道の道端に咲く野菊の仲間。はんなり趣ある色合いの里山の野の花

ヨメナ。秋、農道の道端に咲く野菊の仲間。はんなり趣ある色合いの里山の野の花


農家風休憩舎まで戻ると、脇に伸びる細い山道があります。ここを登ると、疎林広場に出ます。野原には、バッタがピョンピョン。

小高い丘の上に広がる疎林広場

小高い丘の上に広がる疎林広場

ここにはボランティアの皆さんが、麦やサツマイモを、昔ながらの二毛作で育てていらっしゃる畑があります。秋が深まれば、畑のそばの木から落ちた、コロンとかわいい、クヌギのどんぐりも見つかるかもしれません。

まん丸い形が特徴の、クヌギのどんぐり。落ち葉はたい肥に利用される

まん丸い形が特徴の、クヌギのどんぐり。落ち葉はたい肥に利用される

このどんぐりのなる木について、今、気になる現象「ナラ枯れ*3」が起きつつあります。これまで、三浦半島の葉山や横須賀あたりで、山に茶色く変色した木が増えているのを見て不安に思っていたのですが、2020年になって、鎌倉の山も、大分、茶色く葉が枯れた木が増えてきました。

コナラやスダジイ、クヌギなど、どんぐりのなる木が、多く被害を受けているとのこと。特に、鎌倉の森にはスダジイやコナラが多く見られ、かなりの割合で森の木が枯れていってしまう可能性もあり、自然や森に造詣の深い皆さん、鎌倉市公園協会の方からも、心配の声が聞かれます。

*3 ナラ枯れ

ナラ類やシイ・カシ類の木の幹に、カビの一種「ナラ菌」が入り、水の通りが悪くなって木が枯れる現象。菌がついたカシノナガキクイムシという体長数 mmの昆虫が幹に穴を開けて入り込むことで起こる。

参考リンク(PDF)
「ナラ枯れの被害をどう減らすか ―里山林を守るために―」(独立行政法人 森林総合研究所 関西支所発行)
https://www.ffpri.affrc.go.jp/fsm/research/pubs/documents/nara-fsm_201202.pdf

 
森林総合研究所が発行する資料(「ナラ枯れの被害をどう減らすか」)によれば、ナラ枯れの起きる木は、薪炭林の老齢樹・大径木に多いとされます。 

かつて人々は、森の木を伐っては「薪(まき)」でご飯やお風呂をたいたり、炭焼きなどに使用したりして、その切り株から生えてきたわき芽「ひこばえ」を育てて次世代の森を育てながら、自然と共に暮らしてきました。やがて近代化が進んで電気やガスが普及し、森は手入れを放置されて、大きくなりすぎた木や老齢樹が増えてきました。

そうして放置された、森の老齢樹に多くみられるようになった「ナラ枯れ」。茶色く枯れてしまった木々は、本来、人と共にあった森からの、人と自然のあたたかな関係を取り戻したいというメッセージのようにも感じられます。ナラ枯れが進む中、これらの木が枯れてしまった後、タブやヤマザクラなどが増えていくかも、という、「ナラ枯れ後」を見通したご見解もあります。森の植生が、大きな形で変わっていきそうですね。

温暖化が進む中、温暖な場所によくみられる常緑の照葉樹の森に遷移が進んでいきそうな予測がされますが……鎌倉産のヤマザクラの種をまき、育てるなどして、人と自然が共にあったころをほうふつとさせる、鎌倉の季節感ある里山の明るい雑木林も、残っていったらいいなと思います。


かけがえのない谷戸の自然を後世へ

谷戸には水辺から斜面林、野原まで、限られた面積の中にさまざまな環境があるのが特徴。そのため、それぞれの環境に適応した多様な動植物がすみ、地域の豊かな自然生態系をかたちづくっています。

チンチンチン……カネタタキなど、秋の鳴く虫の声を聞きながら、ゆるやかにカーブする道を下って。秋はゴンズイやガマズミなど、赤い木の実との出会いも楽しみ。

つやつや光るガマズミの実

つやつや光るガマズミの実

やがてスタート地点の、鎌倉中央公園バス停に戻ります。

ほっと心和む里山の風景、「鎌倉にこんな田んぼがあったなんて」と、皆さん目を丸くする、鎌倉中央公園。9月下旬~10月中旬ごろ、かわいらしい赤い花々が、湿地を一面に彩ります。地域のボランティアの方々にはぐくまれて……これからも、皆さんのあたたかな手で、鎌倉の素朴なかけがえのない谷戸の自然が、大切に後世に守り伝えられていきますように……楽しみに、応援しながら見守っていきたいと思います。


今回のさんぽ道

今回のさんぽ道

コースタイム:約2時間
「鎌倉中央公園」バス停~上池~管理棟~湿性花園~下池(約5分)
下池〜鎌倉中央公園山崎口〜ししいし〜湿地(約6分)
湿地〜野外生活体験広場(約10分)
田んぼ一周(約30分)
※奥の湿地・梅林まで行く場合は、往復時間(約40分)を追加
田んぼ〜野外生活体験広場そばの山道〜疎林広場(約15分)
疎林広場〜下りの山道〜子供の森〜「鎌倉中央公園」バス停(約20分)

鎌倉中央公園
住所:鎌倉市山崎1667番
アクセス:「鎌倉市役所前」バス停(鎌倉駅西口より徒歩約3分)より「鎌 51 系統 京急ポニー号『鎌倉中央公園行き』」で約12分、終点下車
TEL:0467-45-2750
開園時間:8時30分~17時15分(7・8月は7時30分~18時)
休園日:なし
http://kamakura-park.com/go/central_park/index.html
 
※バスの本数が少ないのでご注意ください。ほかの行き方もありますので、鎌倉市公園協会のホームページをご覧ください。
http://kamakura-park.com/go/central_park/index.html

※鎌倉市公園協会発行パンフレット「てくてく日和」にも、公園へのアクセスマップ(PDF)が掲載されています。
http://kamakura-park.com/tekuteku/pdf/central.pdf


Profile
Writer
村田 江里子 Eriko Murata

鎌倉フラワー&ネイチャーガイド。鎌倉の自然と遊び育つ。日本生態系協会職員・鎌倉市広報課編集嘱託員を経てフリー。環境省環境カウンセラー・森林インストラクター。著書に『花をたずねて鎌倉歩き』(学習研究社)がある。「人は自然に生かされている生きものの一員。「楽しい」「好き」「大切にしたい」の想いをはぐくむことで、自然あふれるすてきなまちを未来に引き継ぐいしづえとしたい」と、鎌倉の花や自然、歴史を楽しむ講座「花をたずねて鎌倉歩き」を主宰し14年を迎える。「ほっこり穏やかな気持ちになれる、秋の谷戸。鎌倉のこんな素朴な一面や、あたたかな地域の皆さんの想いとご努力ではぐくまれてきた谷戸の自然・かけがえのない地域の生きものたちに、思いを馳せていただけたら嬉しいです」
https://ameblo.jp/ecohanablog

`
Page top