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アマナとひらく「自然・科学」のトビラ
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連載

花と自然の鎌倉さんぽ「2月 如月」

ふくいくと咲く花々に
春の兆しを感じて

花と自然の鎌倉さんぽ
「2月・如月」編

写真・文/村田 江里子

冷たい空気の中にも、凛と咲くウメの香りに春の兆しを感じる2月のさんぽ道。鎌倉駅を起点とし、寿福寺や英勝寺、鶴岡八幡宮、宝戒寺などをめぐる、歩きやすいコースです。鎌倉フラワー&ネイチャーガイドの村田江里子さんがご案内します。

ほころび始めたウメの花をたずねて、鎌倉を歩いてみませんか? 趣ある路地や寿福寺の参道を経て、白梅が咲く英勝寺へ。紅白のウメやツバキ咲く宝戒寺へ抜けるさんぽ道をご紹介します。

今回は鎌倉駅の西口側から、路地を通り、鶴岡八幡宮の前を抜けて、再び鎌倉駅の東口側へと戻る、くるりと歩くコースです(記事の最後には、地図とコースタイムを掲載しています)


お稲荷さんがたたずむ路地

まずはJR鎌倉駅西口からまっすぐ歩いて、紀伊国屋前の交差点を左折。おしゃれな洋服屋さん「7WONDERS」の向かいの角を左折して、静かな路地に入っていきましょう。

少し進むと、右手に小さなお稲荷さんがあります。これは「刃(やいば)稲荷」、別名「正宗稲荷」と呼ばれています。中世の刀鍛冶の名匠・正宗の屋敷にまつられていた稲荷社と言われます。

タブノキの緑に包まれた正宗稲荷

タブノキの緑に包まれた正宗稲荷

ここからほど近く、JR鎌倉駅ホーム北端と交差する通りの西側に、正宗より受け継がれた二十四代目に当たる方が、今も正宗工芸美術製作所を営まれており、正宗にゆかりの深い場所であることがうかがえます。

石造りの祠や、祠を守るようにたたずむ常緑のタブの木は、路地にしっとりとした歴史の趣を与えています。


趣ある小径を歩いて。日本庭園レストラン・Sashoを経て寿福寺裏へ至る道

趣ある小径を歩いて。日本庭園レストラン・Sashoを経て寿福寺裏へ至る道

和のたたずまいの竹垣を眺めながら、道を進んでいきましょう。突き当りの角にある、趣ある日本家屋は、Sashoという日本庭園レストラン。

昭和初期の古民家を活かした、Sasho

昭和初期の古民家を活かした、Sasho

昭和2年(1927年)建築の、重厚感ある昔懐かしいたたずまいの建物。窓から臨めるのは、京都の庭師さんがつくられたという日本庭園……四季の谷戸の風情を楽しみながら、丁寧につくられた和食を味わえるお店です。Sashoではコースとお弁当からお料理を選べます。

3日間じっくり煮込まれた、やわらかな豚のもみじ煮

3日間じっくり煮込まれた、やわらかな豚のもみじ煮

ある日のコースの、メイン料理をご紹介しましょう。豚のもみじ煮は、3日間煮込まれた、やわらかなお肉。脂も落ちて、上品な深いコクの、和風ビーフシチューといった味わいです。なめらかでやさしい舌触りの、サツマイモのピューレとともにいただいて。昔懐かしい和の空間で、心づくしのお料理に至福のひとときを過ごせます。古民家でのすてきなイベントも開催されていますので、どうぞホームページをチェックしてみてください。

Sashoの角を曲がると、岩盤をうがってつくられた洞門が。何気ない生活の道に、いにしえの趣が感じられるのが、鎌倉らしさの一つと言えるかもしれません。

Sashoの前を経て洞門をくぐり進むと、寿福寺の裏手に出ます。T字路を左に進むと、やぐら群や源氏山方面の道へ。右に進むと寿福寺へ

Sashoの前を経て洞門をくぐり進むと、寿福寺の裏手に出ます。T字路を左に進むと、やぐら群や源氏山方面の道へ。右に進むと寿福寺へ


森と人のこれからを想う山道

突き当りのT字路を右折すると寿福寺の方に出ますが、その前にちょっと寄り道して、源 実朝や北条政子の墓のある、やぐら群を訪れましょう。T字路を左折して少し進むとすぐ左手に、源氏山公園に登る山道入口の道標があります。

今回はハードコースになってしまうので訪れませんが、ここから進むと、ちょっとした山道歩きを楽しんで、15分ほどで源氏山公園の源 頼朝像広場のそばに出ることができます。気軽な山道歩きで源氏山公園に行けるので、私もよく講座でご案内している道です。

寿福寺裏から源氏山公園へ至る道。山道を経て、15分ほどで公園へ到着します

寿福寺裏から源氏山公園へ至る道。山道を経て、15分ほどで公園へ到着します

なお、源氏山からさらに伸びる葛原岡ハイキングコース・大仏ハイキングコースは、2020年2月中旬現在、前年の台風15号と19号による倒木・がけ崩れなどの被害のため、通行禁止なのでご注意ください。源氏山公園に出たら同じ道を戻るか、銭洗弁財天方面から鎌倉駅に戻るのがおすすめです。

台風の影響で、鎌倉市では倒木や崖崩れなど、大きな被害が出ました。被害に遭われた皆さまへ、心よりお見舞い申し上げます。市では、2020年3月までに葛原岡・大仏ハイキングコースの一部、6月までに同コースのすべてと、天園コースの一部の通行を目指しているといいます。鎌倉市観光協会のホームページで、最新情報をご確認いただけます。

鎌倉市観光協会:ハイキングコース被害状況について
https://www.trip-kamakura.com/article/6784.html


寿福寺裏の墓地へ至る道の脇道から源氏山公園に至る山道は、台風の後に比較的早く通れるようになりましたが、やはり大きな倒木がありました。地権者や管理者、ボランティアの皆さんのご努力で、森や山道は整備されつつあり、再生への一歩が進んできています。

2019年の台風15号と19号により、多くの被害を受けた鎌倉の森。地権者や管理者・ボランティアの皆さんのご努力により整備されつつあり、森の再生への一歩が進んできている

2019年の台風15号と19号により、多くの被害を受けた鎌倉の森。地権者や管理者・ボランティアの皆さんのご努力により整備されつつあり、森の再生への一歩が進んできている

岩盤の上に薄い表土が乗った状態の鎌倉の山では、斜面の木が大きくなりすぎると、その重みで根ごと倒れやすくなります。そのように森の木が倒れることを、昔の土地の方は「ザゲーリ(座返り)」と呼びました。これを防ぐ意味でも、木が大きくなりすぎる前に間伐し、炭や薪にして生活に役立て、また次世代の脇芽を育てていたそうです。

しかし、近代化が進んで電気やガスが発達し、森の手入れが放棄されつつある今。脈々と営まれてきた、森や自然の恵みをいただきながらお返しする循環型の暮らしは、失われてきています。

森は、都市の保水をしながらヒートアイランドを防ぎ、きれいな空気と心安らぐ景観をつくることで、私たちに大きな恵みをもたらしてくれます。今回の台風は、忘れかけていた森の存在を思い出させてくれるきっかけになったのかもしれません。

皆さんのご努力のおかげで、少しずつ、台風の被害から復旧が進んできた今。鎌倉では、森への想いを持つ人や団体が集まって学び合い、知恵を出し合う「森のくるまざフォーラム」が開かれるなど、新たな取り組みも始まっています。
https://www.facebook.com/events/211217546685733/

森の手入れをすることで光が差し込む明るい雑木林には、春、スミレが咲き誇る(源氏山公園にて、3月第4週撮影)

森の手入れをすることで光が差し込む明るい雑木林には、春、スミレが咲き誇る(源氏山公園にて、3月第4週撮影)

自然の恵みをいただいて生きる、生きものの一員である私たち。自然や森との関わりを、少しずつ見直して……森と人とのあたたかな関係を、楽しみながら取り戻していくことができたらいいですね。


緑にしっとり包まれたやぐら群

森に想いをはせたら……元の道標のあった場所から、石段を登って寿福寺裏の墓地を訪れてみましょう。

まっすぐ進んだ奥の突き当り左手には、鎌倉文士・大佛(おさらぎ)次郎氏のお墓もあります。大佛氏は聖域といわれた鶴岡八幡宮の裏山・御谷を開発から守るべく立ち上がり、古都保存法制定の立役者となりました。今も緑に包まれた鎌倉。氏はどんな思いで、この森と人の今を見守っているのでしょうか。

突き当りを右手に折れて、さらに一番奥へ進むと、山すそにうがたれた横穴・やぐらが並んでいます。

しっとりと緑に包まれた、寿福寺裏のやぐら群

しっとりと緑に包まれた、寿福寺裏のやぐら群

やぐらは、中世の鎌倉特有の武士や僧侶のお墓。このやぐら群の中には、北条政子や源 実朝(さねとも)の墓もあります。

鎌倉幕府を開いた源 頼朝の妻・北条政子は、頼朝亡き後、鎌倉幕府の実験を握り、尼将軍と呼ばれました。封建時代日本を動かすほどの情熱と力をもった女性。その生きざまに、想いをめぐらせます。

やぐらの中の大きな五輪塔、北条政子の墓。同じやぐら群に源 実朝の墓もあります

やぐらの中の大きな五輪塔、北条政子の墓。同じやぐら群に源 実朝の墓もあります

源 頼朝と北条政子の間に生まれた源 実朝は、鎌倉幕府 第三代将軍となりました。雪の降る夜、鶴岡八幡宮の大石段脇にあるイチョウの陰に隠れていた甥(おい)の公暁(くぎょう)により暗殺されたとも言われ、源氏の将軍は三代で途絶えました。

こうした北条政子や源 実朝の墓のある寿福寺は、もと源 頼朝の父の義朝の屋敷があったところ。頼朝はこの地に幕府を築こうとしましたが、父の家来がお堂を建てていたため、今の荏柄天神社(えがら てんじんしゃ)の近くに大倉幕府をつくる運びとなりました。

頼朝の亡き後、北条政子がその遺志を継いでこの地につくったのが寿福寺です。鎌倉五山第三位の、格式の高いお寺です。

緑のコケが美しい。すがすがしい寿福寺の参道

緑のコケが美しい。すがすがしい寿福寺の参道

道を戻り、下って突き当りを左に曲がって進みましょう。やがて寿福寺の前に出ます。山門には結界があるため、門の外からお庭やお堂を拝むお参りとなります。コケの美しい参道を歩いていきましょう。


鎌倉唯一の尼寺で白梅や竹林に心洗われる

寿福寺を出たら左手へ進むと、すぐに英勝寺の門に着きます(木曜日はお休みです)。2月中旬なら、門前で白梅が迎えてくれるかもしれません。

白梅が明るい光を振りまくように咲く、英勝寺の通用門(2月第3週撮影)

白梅が明るい光を振りまくように咲く、英勝寺の通用門(2月第3週撮影)

入口の通用門には、キキョウと三葉葵(みつばあおい)の御紋が組み合わせられた、華やいだ印象の紋があしらわれています。

英勝寺は、江戸城をつくった太田道灌(どうかん)の屋敷跡。開山は、徳川家康の側室だった「お勝の局(おかつのつぼね)」です。そうしたことから、太田家の家紋・キキョウと、徳川家の家紋・三葉葵が紋に用いられていると伝わります。

太田家の家紋・キキョウと、徳川家の家紋が組み合わせられた、しゃれた印象の通用門

太田家の家紋・キキョウと、徳川家の家紋が組み合わせられた、しゃれた印象の通用門

同じく2月中旬なら、境内の梅林にもふくいくと白梅が咲いているかもしれません。9月中旬には、ヒガンバナが美しく咲くお庭です。奥には、黒いスカートをはいたような鐘楼が。鎌倉唯一の尼寺らしい、優美な雰囲気です。

このお寺を開山した、お勝の局こと英勝院は、聡明な女性でした。徳川家康に「食べ物のうち一番うまいものは何か?」と聞かれると「塩でございます」と答え、次いで「一番まずいものは何か?」と問われると、「やはり塩でございます」と返したと言います。料理は味付け次第でどのようにもなり、人の使い方も同じだとも受け取られ、居合わせた人々はみな深く感心したそうです。


セミの背中にあるハート形はイノシシの目の形になぞらえた「猪目(いのめ)」といって、魔よけの意味もあるそう

セミの背中にあるハート形はイノシシの目の形になぞらえた「猪目(いのめ)」といって、魔よけの意味もあるそう

仏殿でご本尊にお参りし、正面扉の下を見てみると……小さなセミの飾り金具が。セミを驚かせないよう静かにお参りください、という尼寺らしいやさしさの表れだということです。

境内で、静かに竹林さんぽを味わえる

境内で、静かに竹林さんぽを味わえる

奥には、すがすがしい竹林も。青々とまっすぐ伸びる様子から、清浄さを意味する竹。竹林を歩くうち、心も清らかになっていくようです。

ご本堂を白梅が彩る(2月第3週撮影)

ご本堂を白梅が彩る(2月第3週撮影)

2月末ごろには、白い花びらに鮮やかな紅色のガクをまとって、ぽってりと咲く豊後梅(ぶんごうめ)も、境内を明るく彩ります。


黒い板塀がいざなう小径へ

英勝寺を出たら、寿福寺前方面に少し道を戻って、踏切を渡って進んでいきましょう。3分ほど進むと、川喜多映画記念館の板塀が見えてきます。開館時には、お庭の道を通り抜けていくこともできるので、ぜひ歩いてみましょう。

川喜多映画記念館。昔ながらの建築や板塀、路地……谷戸の緑を借景にした、こうしたまちの風情・景観も、心に安らぎを与えてくれる鎌倉の大切な宝物

川喜多映画記念館。昔ながらの建築や板塀、路地……谷戸の緑を借景にした、こうしたまちの風情・景観も、心に安らぎを与えてくれる鎌倉の大切な宝物

映画を通じて国際交流に貢献した、川喜多長政・かしこ夫妻の旧邸が、今は鎌倉市の映画記念館となっています。映画にまつわる展示や、上映も楽しめる施設。往時の趣を大切に活かした施設として2010年に開館しました。

お庭の奥には哲学者・和辻哲郎邸を移築したという日本家屋があり、川喜多夫妻は、ここで海外から訪れる映画監督や映画スターをもてなしたということです。

まっすぐ進むと、小町通りの北端に着きます。鎌倉十井(じっせい)の1つ「鉄の井(くろがねのい)」の角を経て、さらに進みましょう。そのまま東に進むと、目指す宝戒寺に着きます。

途中で鶴岡八幡宮に立ち寄り、池のほとりで一息ついてもいいですね。2月末には、源氏池の小島に、ピンクのカワヅザクラが咲いていることでしょう。

 


紅白の花が咲く “想いのまま”

宝戒寺を拝観しましょう。門を入ってすぐ右手に、赤と白の花が1つの株から咲く「想いのまま」というウメがふくいくと咲いているかもしれません。

門を入ってすぐ右手に咲く紅白のウメ「想いのまま」(2月第3週撮影)

門を入ってすぐ右手に咲く紅白のウメ「想いのまま」(2月第3週撮影)

そして、本堂左手を見ると、堂々と大きなしだれ梅の大樹が。2月下旬ごろ、白い花を咲かせます。

ウメは中国語の「梅=メイ」がなまってこう呼ばれるようになったと言われます。奈良時代には、花と言えばサクラではなく、ウメを指したというほど、日本人の心に古くから根差してきた花。松竹梅の一つにも数えられ、寒い冬の時期に凛と花を咲かせる姿や甘酸っぱい香りが、はんなり新春の風情を運んでくれます。

足元には、黄色いフクジュソウの花も。“スプリング・エフェメラル(春のはかない命)” と呼ばれる植物の一種で、春の妖精とも言われます。

鎌倉の社寺などで、冬の足元をお日さまのように明るく彩ってくれるフクジュソウ(2月第4週撮影)

鎌倉の社寺などで、冬の足元をお日さまのように明るく彩ってくれるフクジュソウ(2月第4週撮影)

花が咲いた後に葉が出て光合成し、夏には葉が枯れて、翌年の春まで地中で過ごします。鎌倉には自生していませんが、自生地の雑木林などでは、木々の葉が茂り、日陰がちになる夏が来る前に、たっぷりと光合成をして、養分を蓄えてしまうのだそうです。


あたたかな提灯の灯りがともる、本堂に上がってお参りをしましょう。宝戒寺は、鎌倉幕府執権・北条氏の屋敷跡に建てられたお寺。鎌倉幕府が滅亡した後、北条氏をまつるため、後醍醐天皇が足利尊氏に命じてつくらせました。

しだれ梅が彩る宝戒寺のご本堂

しだれ梅が彩る宝戒寺のご本堂

ご本尊は、子育経読地蔵(こそだてきょうよみじぞう)とも呼ばれる地蔵菩薩像。やさしく、厳かなたたずまいで、子どもたちの行く末を見守ってくださるようです。本堂では、鎌倉・江の島七福神に数えられる、病魔対敵のご利益がある毘沙門天にもお参りできます。

ご本尊に向かって左手の窓から外を望むと、秋から冬には、あめ色のビー玉のような実がたわわになった大きな木が見えるかもしれません。これはムクロジの木。

蝋細工のようなムクロジの実

蝋細工のようなムクロジの実

飴色のムクロジの実の皮は、水にぬらしてこすると泡立つ性質が。せっけんにも入っているサポニンという成分を含み、昔は洗濯に用いられました。

皮の中には、羽根つきの玉にも用いられる黒い種が入っています。ムクロジは、漢字では「無患子」と書き、子どもが患わない=病気にならないという意味をもちます。羽根つきは、元は女児が健やかに育つようにという願いを込めて行われる神事だったそう。境内では羽根つきの羽根を模した、やさしい和の色合いのお守りも授与されています。


お堂に上がらせていただき、窓からウメの花を望んで……心まで暖かくなるようなお参りをしたら、お庭を一周しましょう。3月には、辺りをツバキの花が彩ります。はぎ寺とも言われる宝戒寺は、9月には白ハギが境内一面に咲くところです。

華やかに、ウメが咲き誇る境内(2月第3週撮影)

華やかに、ウメが咲き誇る境内(2月第3週撮影)

裏のお庭を回り、ムクロジの木のそばのご本堂の脇に出たころ……ご本堂のそばの1本のツバキの葉先が、3つに分かれているのに気づくかもしれません。これは「キンギョツバキ」。その葉の形から、キンギョになぞらえたツバキです。3月ごろには、赤い花が咲きます。

ここから少し先に進んだところには、9月ごろリンゴのように大きな実がなる「リンゴツバキ」もあります。

葉の先が3つに分かれた様がキンギョのようなキンギョツバキ(3月第2週撮影)

葉の先が3つに分かれた様がキンギョのようなキンギョツバキ(3月第2週撮影)

鎌倉に自生するツバキは、紅色のシンプルなヤブツバキが主ですが、社寺やお庭では色も形もさまざまな園芸種のツバキに出会えます。江戸時代、二代将軍秀忠がツバキを好んだのが、江戸時代に園芸が盛んになるきっかけの一つだったと言われています。17世紀前半にはツバキの品種は100を超え、品種改良が進んだそうです。色も形もさまざまなツバキを愛でて歩きましょう。


「チー」と声がしたら目をやると、蜜を求めてウメの花を訪れる、メジロと出会えることも。もしメジロなどの小鳥に出会ったら、ちょっと耳をすませて、辺りを見回してみましょう。

ウメの蜜を吸うメジロ。冬なら辺りを見回すと、シジュウカラやコゲラ、エナガなどさまざまな小鳥が混群(こんぐん)になっていることも

ウメの蜜を吸うメジロ。冬なら辺りを見回すと、シジュウカラやコゲラ、エナガなどさまざまな小鳥が混群(こんぐん)になっていることも

ジュリリ、と鳴く、ふわふわ白いマシュマロのようなエナガや、胸元のネクタイのような黒い柄が印象的なシジュウカラ、オレンジ色のお腹が鮮やかなヤマガラや、「ギー」と鳴いたりコンコン……と木をつついたりするコゲラというキツツキに出会えるかもしれません。

小鳥たちは、繁殖期には同じ種類同士のペアで行動することが多いですが、冬の時期には、こうして複数の種類の小鳥たちが群れになる「混群(こんぐん)」が見られます。なぜ混群になるのか理由は分かっていませんが、複数の種類の小鳥が一緒に行動することで、えさを見つけやすかったり、危険を察知しやすかったりする効果があるのでは、などと考えられています。

ひそやかで繊細な、冬の小鳥たちの世界。くるくるとこずえを飛び移る小鳥たちを見ていると、生きものたちの世界に迎え入れてもらったような、やさしい気持ちに包まれます。谷戸の社寺林を背後にもつお寺や神社が多いからこそ、鎌倉ではまちでも身近に、こうした小鳥たちと出会うことができるのでしょうね。

輝いて咲くお花たちや、しっとりとまちを包む緑に会える、さんぽ道。お花や緑や生きものたちの姿に、きっと希望や元気をいただけることでしょう。


今回のさんぽ道

今回のさんぽ道

コースタイム:約2時間(ゆっくり休憩を挟むと約3時間)
鎌倉駅~正宗稲荷(約10分)
寿福寺裏やぐら~寿福寺・英勝寺(約10分)
英勝寺拝観(約20分)
英勝寺~川喜多記念映画館(約10分)
川喜多映画記念館~鶴岡八幡宮(約10分)
鶴岡八幡宮~宝戒寺(約7分)
宝戒寺拝観(約20分)
宝戒寺~鎌倉駅(約13分)

※寿福寺裏~源氏山に登り、源 頼朝像広場まで行く行程を挟む場合は、片道約20分(休憩をはさみ往復約1時間)必要。高低差がある山道のため、その後も散策する場合には、本記事のコースで途中にある英勝寺をゴールとするか、源氏山公園から銭洗弁財天経由で鎌倉駅に戻るのがおすすめです。

鎌倉 Sasho(サショ)
住所:鎌倉市扇ガ谷1-11
アクセス:JR「鎌倉」駅西口から徒歩約7分
TEL:0467-24-3233
営業日:不定休。事前に営業日をホームページで確認し、予約してからうかがいましょう
http://cafesasho.blog.fc2.com/
 
英勝寺(えいしょうじ)
所在地:鎌倉市扇ガ谷1-16-3
アクセス:JR「鎌倉」駅西口から徒歩約10分
TEL:0467-22-3534
拝観:9:00~16:00(木曜日はお休み)
拝観料:300円
 
宝戒寺(ほうかいじ)
所在地:鎌倉市小町3-5-22
アクセス:JR「鎌倉」駅東口から徒歩約13分
TEL:0467-22-5512
拝観:8:00~16:30
※4月1日より9:00~16:30(10~3月は9:00~16:00)
拝観料:200円
http://hokaiji.com


Profile
Writer
村田 江里子 Eriko Murata

鎌倉フラワー&ネイチャーガイド。鎌倉の自然と遊び育つ。日本生態系協会職員・鎌倉市広報課編集嘱託員を経てフリー。環境省環境カウンセラー・森林インストラクター。鎌倉市環境審議会委員。著書に『花をたずねて鎌倉歩き』(学習研究社)がある。「人は自然に生かされている生きものの一員。「楽しい」「好き」「大切にしたい」の想いをはぐくむことで、自然あふれるすてきなまちを未来に引き継ぐいしづえとしたい」と、鎌倉の花や自然、歴史を楽しむ講座「花をたずねて鎌倉歩き」を主宰し13年を迎える。「ウメをたずねて、はんなり小径歩き。お寺を包む緑や小鳥たち、けなげに咲くお花たちに出会いながら、寒い冬に、明るい元気をいただけました。台風被害の後、少しずつ復旧が進んできて……自然と人とがともに再生する力を、ささやかながら応援していけたらと思っています」
https://ameblo.jp/ecohanablog

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